ご注意を〜
ギリギリの精神状態で書いたので無駄にシリアスです。
Dグレ7巻〜9巻の間。
イノセンスをぶっ壊されたアレンと一緒に、アジア区支部に保護されてたら……という
完全捏造物語。
名前無変換。
「それでもいい、むしろ何でも読んでやるぜ!」という勇気に満ち溢れている方は、スクロールで
どうぞ。
● たったひとりの君へ ●
僕の姿を見た瞬間、その細い肩は少し震えたようだった。
金の瞳が見つめてくる。
お互いに傷だらけだったけれど、それでも彼女は凛とそこに立っていた。
僕とは大違いだ。
誰もが醜いと言う左手を失って、皆が必要だと言うイノセンスを無くして。
片腕のない無様な姿で、僕は彼女の前にいた。
向かい合ったまま立ち尽くす。
沈黙。
彼女は何も言わない。
僕は何も言えない。
怖い、と思った。
何がかはわからなかった。
それは金の少女の涙かもしれない。
怒りかもしれない。
絶望かもしれない。
ただ怖いと思った。
これから彼女のその綺麗な顔が、僕のために歪むのかと思うと。
たまらなく怖くなった。
あるいはひどく恥ずかしかったのだ。
彼女の心を痛めつけるだけしかできない、今の自分が。
「…………っ」
僕は息を殺して彼女の前から身を引こうとした。
けれどもそれは、彼女の優しい手が許さなかった。
指先を絡めとられる。
白い掌が、僕の右手を掴んだ。
彼女は相変わらず僕を見つめていた。
瞬きもせずに見つめていた。
その大きな瞳には涙がたまっていたが、彼女は決してそれをこぼさなかった。
怒ったように頬を赤くして、にらみつけるようにしてこちらを見ていた。
その感情は何だろう。
仲間を守れなかった悲しみ?
イノセンスを破壊したノアへの怒り?
それとも深く冷たい絶望?
そう思うとたまらなくなって、僕は彼女を引き寄せた。
額にかかる金髪が、僕の胸に触れる。
寄り添った細い肩はやっぱり震えていたから、心が痛んだ。
息が出来ない。
苦しい。
「……ごめん」
呟いた僕の声はかすれていた。
それでも口にせずにはいられなかった。
「ごめんなさい……」
「謝らないで」
驚くほどはっきりした声で彼女が言った。
さっきより近くで金の双眸がまた僕を見上げる。
「そんな言葉はいらない」
涙を一杯にためて、それを流すまいと堪えながら、彼女は言う。
肩の震えをそのままに、それでもただ言葉を紡ぐ。
悲しみも怒りも絶望も、精一杯握りつぶして。
「ごめんよりもっと欲しい言葉があるんだ」
僕は目を見張った。
世界に言い聞かせるように、光に願うように、彼女は続ける。
「どうか、またその両手で大切なものに触れたいと思って」
金の瞳が真っ直ぐに見つめてくる。
「もう一度、その両腕で守りたいものを抱きしめたいと願って」
彼女は僕を見据えて、一生懸命、微笑もうとした。
それは不安も恐怖も何もかも吹き飛ばしてしまうような、優しい強さに満ちていた。
「それがあなたの希望よ」
どうして。
そんなことを言うのだろう。
悲しみでもなく、怒りでもなく、絶望でもなく。
彼女は僕に希望を言うのだろう。
「それが私の祈りよ。アレン」
あぁこの人は。
この金の少女は。
謝罪の言葉よりも、僕にその願いを持つことを欲したのだ。
本当に今度こそ息が出来なくなった。
何かに胸が満たされて、死んでしまいそうになった。
僕はめちゃくちゃに彼女を抱きしめた。
でも駄目だ。
右手だけじゃ足りない。
片腕だけでは心に到底追いつけない。
「……約束する」
金の髪に顔を埋めて、僕は震える声で囁いた。
奪われたからだとか。
必要だからだとか。
そんなことじゃなくて、ただ僕の。
その存在が望む未来が欲しいと言った少女に、全力で誓おう。
また、必ず。
両腕で君を抱きしめるよ。
(触れた熱がひどく心地よくて安堵してそれこそ光のようだった炎のようだった確かな希望だった僕の僕の僕の僕だけのたったひとつ の)
(希望だったんだ)
気に入ってくれた方がいらっしゃったので日記より移動させました。(ありがとうございます!)
修羅場のあまりコミックス7〜9巻を読み返して、思いついた捏造物語。
勢いだけで書いたので、ほとんど記憶に残っていません。(汗)
ただ単純に「片腕とか不便だよな……」と思って書いた気がします。
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