やっと触れた、君の右手。
やっぱり生きてるってすごいね。
だってこんなに暖かいのだから。
● 永遠の箱庭 EPISODE 12 ●
消毒液の臭いがした。
きつい香りだ。
あまりに強いそれに、アレンの意識は闇の中から引き上げられた。
鉛のように重い瞼を開く。
ぼんやりと霞む世界。
どこだ、ここ。
僕は……?
じっと観察してみると、見上げているそれは白い天井だった。
見たことのないものだ。
どこだろうと首をひねったところで、唐突に視界を塞がれた。
目の前を覆うようにしてこちらを覗き込んできたのは、禿頭の老人だった。
またもや見たことのない者だった。
アレンの驚きなどまったく気にもとめずに、老人は声を張り上げた。
「おお、お前さん。目が覚めたかい!」
「え、あ、はぁ……」
わけもわからず声を出したアレンは、途端に走った激痛にうめいた。
全身がバラバラにされたような気分だった。
必死に悲鳴を押し殺していると、老人が怒ったように告げる。
「大人しくしておれ、お前さんは生きているのが不思議なくらいの重症だぞ」
「……っ、すみ、ま、せん。あなた、は……?」
なるべく体に負担をかけないようにしながら絶え絶えに訊くと、老人はいったんアレンの視界から消えた。
「わしはベルネス公爵家専属の医者じゃ。昨日の真夜中にリオン坊ちゃんが部屋に走りこんできてな。こんな老いぼれを叩き起こして言うのだよ。“怪我人がいる、何とかしてくれ”とな」
「リオンが……」
合点がいってアレンは呟いた。
どうやらここはベルネス公爵家の屋敷、その一室らしい。
アレンは清潔なベッドに寝かされ、手当てを受けていたようだ。
体の下に感じるシーツを握り締めて、アレンはぼんやりと瞬いた。
医師は脇で医療道具をいじっているのだろう。
金属のぶつかり合う音が聞こえていた。
「あんな坊ちゃんは初めて見たよ。本当によく立ち回ってくれた。誰よりも必死にお前さん達の手当てを手伝ってくれたのだからな」
アレンはそれを聞いて、リオンに感謝し、口元を緩めた。
しかし次の瞬間には、傷の痛みも忘れてベッドの上に飛び起きていた。
突然のことに驚く医師に、アレンは噛み付くような勢いで詰め寄る。
「は!?」
声をあげると血を吐きそうになったが、アレンは構わなかった。
医師は“お前さんたち”と言った。
一刻も手当てを受けなければいけないほどの重症だったのは、も同じなのである。
「は無事なんですか!?」
「お、落ち着け」
今にも飛び出していきそうなアレンを押さえつけて、医師は言った。
「大声を出すな。お前の大切なお嬢さんが起きてしまうぞ」
「え……?」
医師が指差す方向をアレンは振り返って、目を見張った。
アレンの寝ていたベッドの隣だ。
そこには同じように寝台があり、その上で金髪の少女が眠っていた。
息をしてないんじゃないかと思うほど綺麗な顔で、上掛けを引きかけ、そこに横たわっていた。
アレンは彼女が無事だったことに何だか死ぬほど安堵して、詰めていた息を吐いた。
そしてすぐさま襲ってきた激痛に、ベッドに倒れこんだ。
無茶をしたせいで苦痛の波が絶え間なくアレンをさいなんだ。
「だから大人しくしておれと言うのに。せっかく助かった命じゃ。無理をするでない」
「……っ、は、い」
アレンは何とか頷いて、全身の力を抜いた。
医師が上掛けをかけなおしてくれる。
「しかしあのお嬢さんには驚かされたよ。あの大怪我で、お前さんを担いで、森から出てきたのだからな」
「が……?」
驚くアレンに医師は続けた。
「ああ。リオン坊ちゃんがそれを見つけてな。その途端、意識を失ったのだが仕方がない。ただでさえあんな
小柄な女の子が、男ひとりを担いで歩ける距離ではないぞ」
「……………………」
「あの状態でよくそんなことが出来たものだよ。……よほどお前さんを助けたかったのだろうな」
医師は感嘆したようにそう呟いて、アレンに安静にしているように言いつけると、部屋から出て行った。
どうやらリオンを呼びにいったようだ。
アレンは静寂の降りる室内で、顔だけを動かしてを見た。
一定の距離の向こうにある、白い横顔。
医師は言った。
もう少し手当てが遅ければ、アレンももどうなっていたかわからないと。
はあの後、意識を失った自分を担いで、再び歩き出したのだ。
そして森を抜け、リオンの姿を認めた瞬間、昏倒した。
なんて少女だろうと思う。
敬服すべき強さである。
けれど、アレンは知っていた。
彼女は弱いのだ。
己の弱さを思い知っているのだ。
無力さに喘ぎ、絶望に胸を塞がれ、いつだって小さく震えている。
けれど歩みを止めることを許さなかった。
命を諦めることを拒絶し、必死に前に進んでいた。
は弱い、だからこそ生きる意味を知っていた。
だからこそ、こんなにも強くあることができるのだ。
「すごいね、は」
アレンは思わず呟いていた。
いまだに眠り続けるに、小さく囁く。
「君はとてもすごいと思う。けれど少し独りで無茶をしすぎだよ」
アレンは唇を噛んだ。
強く強く、拳を握り締める。
「僕も人のことを言えないのだろうけど、それでも」
それでも。
「もっと、頼ってくれたって……」
アレンの声は最後まで音にならなかった。
言えなかった。
もっと頼って欲しいだなんて。
彼女は自分を信じてくれたけれど、それは結果論でしかなかった。
守るためとはいえ、一度は命を捨てようとしたアレンを、は信用できないと言った。
そしてこれからも、アレンがそうするのであれば、彼女は躊躇いもなくその信頼を捨てるだろう。
一緒に戦うことも、背をあずけることも、許してはくれなくなるだろう。
それはの信念であり、アレンを守るためだ。
彼女はなんて誇らしい戦士なのだろう。
同時に自分が嫌になる。
彼女に最後の最後まで頼ってもらえないような自分が、いつ失ってしまうかもわからない信用しか得られない自分が。
ひどく気に入らない。
こんな、ふがいない、己自身。
「僕は……」
アレンは片腕で目元を強く押さえつけた。
「もっと強くなるよ。君が胸を張って仲間だと言えるくらい、強く」
そうでなければいけないと思った。
アレンはこの道を選んだのだ。
エクソシストとしての道を。
ならば貫かなくてはならない。
全て救うために、生きることを。
そしてそれは同時に、の信じる仲間のことだった。
憧れを抱くほど強く立ったひとりの少女に、アレンは認めてもらいたかった。
どうか何もかもを守れるくらい強く、そしてこんな想いを繰り返してたまるものかと心に誓う。
「もう二度と、全ての命を諦めたりしない」
己に、世界に、この十字架に。
そして君に。
約束するよ。
アレンは強くそう囁いた。
その声は静寂に響き渡り、胸に深く刻まれた。
そして何かの気配を感じて瞳を開く。
視界一杯を金で染めて、ティムキャンピーがそこにいた。
「ティム」
アレンは少し微笑んで、ゴーレムを引き寄せた。
その翼の羽ばたきをしばらく指先で感じた後、ふと思い出して通信を繋ぐ。
しばらくした後、通じた無線の向こうで声がした。
『もしもし?』
「コムイさん。アレンです」
名前を名乗るとコムイは喜色に染まった声をあげた。
『ああ、アレンくん!目が覚めたんだね』
「はい。探索隊の人から連絡が入ってるとは思うんですけど、一応報告を」
アレンはベッドの上で少し身じろぎをした。
別に見えていないのだから気にしなくてもいいのだが、何となく居住まいを正す。
「アクマは全て破壊しました。イノセンスも、僕達も無事です」
『うん、無事とは言い難いほどの重症だけどね。生きていてくれて本当によかった』
コムイの声に優しい笑みが混じる。
『お疲れ様。がんばってくれて、ありがとう』
「……はい」
『ちゃんの容態はどう?』
そう訊かれてアレンはちらりと隣に視線をやって、それから答える。
「まだ眠ってます。僕を助けるために、そうとう無茶をしましたから……」
『あー、うん。ちゃんだからね。アレンくんもあんまり気にしなくていいよ。その子はそういう子だから』
すべてわかっていると言わんばかりのコムイの口調に、アレンは少し黙った。
『胸倉を掴んで怒鳴られたと思うけど、怒らないでやってくれるかい?』
「そんな、怒るだなんて……」
アレンは慌てて否定しかけて、それからやっぱりやめて、吐息をついた。
何だか言いたいことがたくさんあった。
「って本当に目茶苦茶な人ですよね」
『え?』
「普段はバカ丸出しでまったく手に負えません。全力疾走の変人だし、人の言うこと聞かないし、意味不明なことばっかりやらかすし、何なんでしょうね一体!」
『あのー、アレンくん……?』
「今回だってそうですよ!僕にさんざん命をないがしろにしするなって言っておいて、何ですか、自分だって死ぬほど無茶してるじゃないですか!人のこと言えるもんか!!」
『おーい』
「あぁもう何だかいろいろ思い出してきました、なんて腹立たしい人なんだろう!!」
『…………………』
ひとりで怒り出したアレンにコムイは沈黙した。
どうしたものかと冷や汗をかいているのだろう。
アレンは続けて口を開いたが、しかし自然とその調子は変わっていた。
「でも……」
アレンは言った。
口元に笑みを浮かべて。
「以前のコムイさんの言葉に、今なら素直に頷けますよ」
“ちゃんはね、いい子だよ”
そのとき自分はもう気がついていたくせに、何だか悔しくてそれを否定してしまったんだ。
でも今なら本当に知っている。
彼女の型破りな言動の奥に隠された、途方もない強さと優しさ、そして温もりを。
アレンは静かに微笑んで、囁いた。
「って馬鹿ですけど、最高にいい人ですね」
「あんたもね」
答えた声はコムイのものではなかった。
アレンは硬直した。
気のせいだと思いたかった。
けれどそれは確かにアレンの隣から、よく聞き知った少女の声で聞こえてきたのだ。
固まった表情のまま、ぎこちない動きで首を巡らす。
視線の先には人の形に膨らんだベッド。
そこで人形のように眠っていたが、今はこちらに背を向けて、隠れるように上掛けの中に潜りこんでいた。
わずかに見えている耳が、何だか朱を帯びている。
アレンは頬が赤くなっていくのを感じていた。
いつからだ。
いつから彼女は目を覚まして、自分の声を聞いていたのだ。
いや、いつからだろうと関係ない。
最後の言葉だけでも聞かれていたかと思うと、恥ずかしさで死ねそうだった。
言葉を失くしたアレンのかわりに、無線の向こうでコムイが言った。
『なーんだ。君たち実は大の仲良しなんじゃないか』
楽しそうなその笑い声に、アレンとは怪我の痛みも忘れてベッドの上に飛び起きた。
そして同時に怒鳴った。
「「ちがう!!!!」」
そして見舞いにやってきたリオンが目にしたのは、絶対安静の二人が取っ組み合いの大喧嘩を繰り広げているという、何とも理解しがたい光景だった。
「なんでだ……」
晴れた青い空の下で、リオンは呟いた。
腕を組んで、困惑に眉を寄せて、心底不思議そうに言う。
「なんであんな大怪我で、こんなにすぐに動けるようになるんだ?」
「ふふん、驚いた?こう見えて頑丈に出来てるんだから!」
向かい合って立っていたは胸を張ってそう答えた。
場所はベルネス公爵家正門前。
アクマとの死闘を終えて、数日後のことだった。
「いや、何かお前はそういうあり得ない感じでも理解できるんだけど」
「え。ちょっと待って、それって結構失礼じゃないかな?あれ?気のせい?」
「アレンまでそんな……」
リオンはの隣にいるアレンを見上げた。
彼は全身に包帯を巻いていて、顔も心なしかいつもより白い。
リオンの声は自然と心配そうになる。
「大丈夫か?この未確認生物のすごい回復力に合わせて無理してるんじゃないのか?」
「ありがとうリオン。心配してくれて」
アレンはリオンを安心させるようににっこりと微笑んだ。
「でも大丈夫。ただちょっと疲れているだけですよ」
アレンは何だか怒りの混じる視線をへと向けた。
もアレンと同じく包帯を全身に巻いていたが、明らかに彼より元気そうだった。
「このケガ人だとは思えない変人と同じ病室なのは、もうウンザリです。眠れないから何か面白いことをしろだの、景気づけに歌って踊ってあげるだの、この地方の健康食品を片っ端から持ってこーい!だの、馬鹿みたいなことばっかり言って……!」
「な、何よ。こんなときだからこそ元気出してもらおっかな、っていう気遣いだよ!」
「いりません、そんなものいりません、のしをつけてお返しします」
「てゆーか、あんたはそれを聞いて事あるごとにキレてたじゃない!問答無用で私に挑みかかってきたじゃない!」
「そうそう、ケガ人のくせに毎日飽きもせずに取っ組み合いのケンカしてな」
またケンカを始めそうな雰囲気の二人に、リオンはため息をついてみせた。
ぎりぎりと互いの手を掴み合っているアレンとを、呆れた視線で見上げる。
「お前らってすっげぇ仲悪いふりして、すーげぇ仲良いよな」
「「…………………………………………」」
リオンのその言葉を聞いて、二人は固まった。
しばらくそうした後、同時に叫ぶ。
それは恐ろしく息がぴったりだった。
「「あり得ない!!!」」
「ほら、仲良しじゃん」
リオンが笑って切り返すと、二人は顔を見合わせた。
手を掴み合っていたから思っていたより距離が近かったらしく、慌てて飛び退がる。
妙に遠く離れたアレンとの表情は、非常に不愉快そうだった。
「リオン。世の中には決して相容れないものがあるんですよ」
「そうそう。まだまだ青っちぃ君にはわかんないかもしれないけどね、そういうものがあるの」
「それってつまり?」
「「この人」」
二人は目線も合わさずに互いを指差し、リオンに仲の悪さを訴えた。
けれどリオンは平然と言う。
「まぁお前達がそれでいいんなら、そう思ってれば?」
「何この子!ナマイキだ」
ムッとしたがリオンの頬に手を伸ばした。
しかしリオンはそれをひょいと避ける。
は目を見張ったが、リオンはきちんと立ち直して、ひとつ咳払いをする。
そして二人を見上げると、真剣な表情で告げた。
「『黒の教団』からお越しくださった使者の方々に、当家の宝を献上いたします」
リオンは言いながら、後ろ手で持っていた黄金の短剣を差し出した。
昼の空の下で輝く、イノセンス。
リオンは威厳ある様子で続けた。
「ベルネス公爵家次期当主の名において、ここに約束が果たされたことを宣言します。どうぞ」
「…………………………」
「ふぅ。役目終わり!」
リオンはの手にイノセンスを押し付けると、さもスッキリしたとばかりに伸びをした。
それから、何だか呆然とこちらを見ている二人を見上げる。
「それ持ってていいよ。もう『黒の教団』の物だから。それにはラターニャも同意済みだ。あの女、大怪我して
帰ってきたお前らを見て、そんな恐ろしい物どうしてさっさと引き取ってくれなかったんだって怒り出したんだぜ。自分がさんざんしぶってたくせにさ!」
あははとリオンは明るく笑ったが、アレンとは反応しなかった。
そろって目を見張っている。
リオンはそれを眺めて微笑んだ。
ようやくが自分の手の内にあるイノセンスを見下ろして、それから口を開いた。
「あ、ありがとう……」
「うん」
「でも待って。ベルネス公爵家次期当主って……」
「父様のね、遺書が見つかったんだよ」
言いながらリオンは少し視線を落とした。
体の後ろで手を組んで、囁くように続ける。
「公爵だなんて厄介な仕事をしていたから、いつ死んでも困らないように、弁護士に遺書を預けていたんだって。きちんとサインも捺印もされていたから、正式に認められたんだ」
そこでリオンは吐息をついた。
「俺をこの家の後継者にするって」
「……………………」
「遺産の相続も全て俺になっていたよ。それと、母様の墓を、きちんと公爵家のところに入れるように、って」
「リオン……」
「けれど父様はそれを記した後に、こう書いていたんだ」
リオンは少しだけ潤んだ瞳をあげて、アレンとを見つめた。
青い双眸が、陽の光に煌く。
「“公爵家を継ぐか、遺産を引き継ぐか、それらはすべてリオンの意思にまかせる”って」
「………………君に選択を委ねたということ?」
「うん。自分で選べって。この家に留まるのか、それとも出て行くのか」
それを聞いてアレンは瞳を伏せた。
フロイド・ベルネスの、確かに存在する愛に、胸が締め付けられる。
「フロイドさんは、君がこの家を憎んでいたことを知っていたんですね。だから……」
だから選択肢を残した。
この家を憎むのなら、その枷から飛び出して自由に生きればいい。
本当はここに留まり、自分の与えられる全てを残してあげたいけれど。
それでもリオンの幸せのために、フロイドはそのような遺書を残したのだ。
「だからねぇ、俺決めたんだ。この家を出て行くよ」
あっさりと言い切ったリオンに、アレンとは顔をあげた。
けれど二人が何か言う前に、リオンが口を開く。
「勘違いするなよ。出て行くっていっても、数年だけだ。俺、上級学校に入ろうと思って」
「上級学校……?」
「そう。だっていくら遺書でそんなことを言われたからって、頭の固いラターニャや親戚のジジババ達が、妾の子である俺を後継者だなんて認めるわけないよ」
現に今、親戚達が集まって、大討論会になっているとリオンは言う。
遺書でそのように告げられても、それをそのまま認める者はまだほんの少数しかいないのだ。
「だから、学校に入って勉強してくる。公爵になるために必要なものを身につけてくる。それであの分からず屋どもに俺を後継者だって認めさせてやるんだ」
リオンは青い空の下で笑った。
それはとても素敵で、不敵な笑みだった。
「妾の子だからとか、下賤の血だとか、もう絶対に言わせるもんか。誰にも母様を馬鹿にはさせない。俺を選んだ父様を笑わせない。それだけの人間に俺はなってやるよ」
リオンは背後を振り返った。
そこにそびえ建つ大きな屋敷。
リオンの悲しみも苦しみも優しさも愛も、何もかもを閉じ込めた永遠の箱庭。
「父様の守ってたこの家を、今度は俺が守るよ。俺のことを心配なんかしないで、あの世で母様と静かに暮らせるように、俺が」
囁くリオンの声は震えていた。
それでも少年は、孤独に打ち勝って、告げたのだった。
「俺が、がんばるよ」
振り落ちてくる光が、黒髪を輝かせる。
リオンは勢いよくアレンとを振り返った。
「だって俺は父様と母様に愛されていたんだぜ。これで胸を張って生きていかなきゃ、そんなのは絶対に間違ってるだろ!」
妾の子と蔑まれて、不義の子と罵られて。
それでもこの命は愛されていたんだ。
だったら他に何もいるものか。
それだけで、前を向いて歩いていくのには充分すぎる。
もう誰にも、何にも、笑わせたりはしない。
だって、一番に求めていたものを俺はこの胸に持っているんだから!
「これから俺は、自分の力で、馬鹿にしてくる奴らを一人残らず黙らせるんだ。こんなに愉快で楽しいことってないよ。なぁアレン!!」
その涙のにじんだ笑顔を、アレンは眩しそうに見つめた。
リオンは選択したのだ。
大切な両親を失って、彼はどんなに辛いだろう。
それでも愛されていた命を、その人生を、幸せになるために生きていくことを彼は選んだ。
数ある絶望と後悔の底から、その希望を選び取ったのだ。
リオンは今度こそ胸を張って歩いていくだろう。
愛していた両親に、愛されていた己自身をまっとうするために。
「それは、すごいですね。リオン」
アレンは優しく微笑んだ。
しかしその横で、が硬い声音で言った。
「ねぇ、自分がどれだけ大変なことを言ってるかわかってる?」
リオンはアレンと一緒に驚いた顔をしたが、見つめてくるの表情がとても真剣だったから、一度唇を引き結んだ。
そうして同じくらい真剣な様子で頷いた。
「………………わかってるよ。伊達に公爵家で育ってきたわけじゃないんだぜ。その仕事の重要さも責任も、よく知ってる」
「それでも、がんばるの?」
「うん。…………だってそうじゃなきゃ、俺は俺を生きたことにはならないから」
だから、と続けようとしたリオンは急に言葉を遮られた。
がその首に、勢いよく抱きついてきたからだった。
ぎゅっとリオンを抱きしめて、は言った。
「子供のくせに、ナマイキだ」
「な……っ、お前……!」
「でも……」
そこでは微笑んだ。
花が咲くように、光がこぼれるように、暖かい笑顔を浮かべた。
「かっこいい」
囁くようにそう告げて、リオンが何か言うより早く、が動いた。
ちゅっと軽い音が響く。
少女の薄紅色の唇が、リオンの額に触れる。
そこに落とされた、口づけ。
しばらく沈黙があった。
リオンが呆然と見上げると、はにやりと笑った。
その途端、リオンの顔は面白いぐらいに真っ赤に染まった。
「な……っ、ななななななな……!」
「わー真っ赤だ。照れちゃった」
「ばっ、おまっ、何す……!」
「乙女のキス。言ったでしょ、ご褒美にあげるって」
「だからって……っ」
さらに抱きつかれて、リオンは変な悲鳴をあげた。
わたわたとキスをされた額を押さえる。
あまりにも慌てふためいたその様子に、が嬉しそうに言う。
「今時なんて純情な反応!リオンってばかーわいいっ」
「ぎゃー止めろ!離せ!!」
「え、何?もっとして欲しい?よし来た!はい、ちゅー……」
「こ……っの、変態!!!」
唐突に怒声が響き渡ったかと思うと、の襟首が容赦なくつかまれて、渾身の力でリオンから引き剥がされた。
道路に積もった雪の上に放り出されて、が悲鳴をあげる。
強く打ち付けた腰をさすりつつ見上げると、なんだかホッとした顔のリオンと、ものすごい形相のアレンが見えた。
は涙目になりながら訴える。
「ちょっと邪魔しないでよ!未来ある青少年にお姉さんが素敵なプレゼントをあげてるっていうのに!」
視線を投げられて、リオンは真っ赤な顔のまま、アレンの背後に身を隠した。
「ホラ見て、この素敵な反応!これで何年か後にジェントルマンになったリオンが私のことを思い出して、ちょっと甘酸っぱい気持ちとかになればいいなぁって、ね!“ああ……、もしかしてあれが初恋だったのかな……”みたいなさー、胸キュンな展開を乙女として期待しちゃったりなんかして」
「黙れ変態」
ベラベラとくだらない妄想を話すを、アレンは殺人的な冷たさでそう切り捨てた。
同じぐらい冷たい視線で見下ろしてやると、は引き攣った悲鳴をあげて後ずさった。
そのため雪の中に半ば埋まっていたが、そんなことよりアレンのほうが怖いらしい。
くだらない。
本当にくだらない。
アレンは何だか苛立った心でそう思った。
わずかに振り返って、自分の背にしがみついているリオンを見る。
その真っ赤に染まった両頬。
わざわざキスなんてしなくても、リオンの初恋はすでに、どう見てもだというのに。
これ以上なにを求めているんだ、この馬鹿は。
アレンが眉を寄せて前に向き直ると、さらに雪に埋まるようにしては後退した。
「ご、ごめんなさい冗談です……!ちょっと調子乗っちゃってました、そうだよね男の子の初恋って例外なくお母さんだもんね!すでに手遅れっていうか、あ、あの私が悪かったです全面的に悪かったです、青少年の純情を弄んでしまってスミマセン………!!」
「………………………」
しかもリオンの気持ちに気がついていない。
馬鹿だ。この人、本当に馬鹿だ。
アレンは心底呆れてため息をついた。
「もういいです……。そのまま雪に埋もれて頭を冷やしていてください」
それだけに言い置くと、アレンはリオンを振り返った。
そして妙に切な気に口を開いた。
「あの馬鹿に美しい思い出の一ページを汚されてしまいましたね……。でも大丈夫、リオンなら強く生きていってくれるって、僕は信じています」
「う……、うん……」
「安心してください、世の中あんな変人ばかりじゃないですからね。まともで、善良な人もいっぱいいますからね」
「わ、わかった……」
「ちょっと待て何がわかったのかなぁ、詳しく説明してよ!」
背後でが拳を振り上げたが、アレンは無視して続けた。
リオンにだけ聞こえるように、小声で。
「でも、どうしても辛い夜が来たのなら、お父さんやお母さん、そしてあの変人のことを思い出してみて。それはきっと、君の心を照らしてくれるから」
「アレン……」
「あのどうしようもない馬鹿さ加減が、笑顔を思い出させてくれると思うから」
アレンはそっと囁きながら、微笑んだ。
それは心からの微笑だった。
「僕がそうだったように、ね」
考えてみれば今回だけじゃないんだ。
出逢ったころからは、たくさんたくさん力をくれたように思う。
悪夢を見て哀しみに沈んでしまった朝も、心無い言葉に突き放された昼も、彼女の涙が見たくて追いかけた夜も。
いつも結局、馬鹿みたいなの強さに、救われていたんだ。
感情をさらけ出すのがいつの間にか苦手になっていた僕を、素直にさせてくれた。
ありのままで、いることができたのだ。
そんなときに抱く怒りや悲しみは、それまでと比べものにならないくらい激しくて辛かったけれど、それでも。
それでも一番に笑っていられたんだ。
何よりも鮮明に、心の底から湧き上がるように。
一度知ってしまえばこんな感情、二度と手放せないくらい強烈だった。
嘘や誤魔化しなんて通用しない。
いつだっては“本当”だった。
だから僕も“本当”でいられた。
今度こそ本当に、エクソシストとしての決意を、守るために生きていくことを誓えた。
アレンは微笑んだ。
自分と同じように、小さな箱庭から飛び出して、本物の世界を歩いていくと決めた少年に告げる。
「お互いにがんばろう。に負けないように」
彼女はこの手を掴んで、遠慮なく怒鳴りつけて、他意もなく笑って。
そしてたくさんの温もりをくれた。
だから思った。
胸を張って誇れるような、自分自身になりたいと。
そうすることで、応えたいって、思ったんだ。
リオンはしばらく目を見張ってアレンを見上げていたが、すぐに瞳をゆるめた。
そして明るく微笑んだ。
「うん。絶対に、すごくなった俺を見せ付けてやるんだ!」
「何の話?」
そこでようやく雪の中から這い出してきたが、内緒話のように会話していたアレンとリオンに訊いた。
何だか不審気な顔をしていたから、アレンはにこりと笑って答えてやる。
「別に。お互いに決意をしていただけですよ」
「そうそう」
同じような笑顔のリオンが頷く。
はますます嫌そうな表情になった。
「……決意って、何の?」
「「を見返す決意」」
「何それ!」
は顔をしかめて、声をあげた。
「何を熱心に話しこんでいるのかと思ったらそんなこと!これ以上、いたいけない少年に変なこと吹き込まないの!ホラっ」
怒ったように言って、はアレンの手を掴んだ。
そしてそのまま引っ張って歩き出す。
何を急いでいるのかといぶかしみ、ふと思い至ってアレンはポケットから時計を取り出した。
見てみるともうすぐ汽車の出発する時間だ。
そろそろ駅に向かわなければ間に合わなくなる。
アレンは慌ててリオンを振り返った。
「リオン!ごめん、もう行かないと!」
「ええ!?」
リオンは驚いた声をあげて咄嗟に二人を追おうとしたが、数歩で止まった。
そしてかわりに叫んだ。
「アレン!!!」
呼ばれて二人はリオンを見た。
黒髪の少年は、白い雪に囲まれて、美しい世界の中で、その青い瞳を光らせていた。
「いっぱい迷惑かけてごめん!」
リオンは泣き出しそうに微笑んだ。
「ありがとう!!」
晴天の下で響いた声は、雪に吸われることもなく、風にかき消されることもなく、二人の心に届いた。
は大きく腕を振った。
「こっちこそありがとう!せいぜいかっこいいジェントルマンになってね!」
「いろいろお世話になりました!リオンも元気で!」
アレンも腕を振りながら、“さようなら”と言ったが、はそれっきり前を向いて走り出した。
手を引かれているからアレンもそれに従う。
そうして腕を振り返すリオンの姿は、瞬く間に視界から消えていったのだった。
吐き出す息が白かった。
足元の雪を踏みしめて、ロンドンの街を通り過ぎる。
が無言のまま走り続けているから、アレンは掴んでくる彼女の手を引っ張った。
「だからこっそり帰ろうだなんて、馬鹿みたいなこと言ってたんですね」
は最初、リオンに気づかれないうちに出て行こうと言い張ったのだ。
もちろんそんな礼儀知らずなことは駄目だ、とアレンが言いくるめたのだが。
その理由は「だって私、怪盗だし!」というわけのわからないもので、けれどその真意が、今ならわかる。
「……私、“さようなら”って言葉嫌いなの」
ようやくが足を止めた。
けれどアレンを振り返ろうとはしなかった。
「それは終わりの言葉だから。出来れば“またね”って言いたい。でも、あの子とはもう会わないほうがいいんだ。だって私はエクソシストだから」
は唇をかみ締めて、それから囁いた。
「また会ってしまったら、それはあの子が再びアクマと関わってしまったときよ。そんなのは嫌だもの。だから、もう会わないほうがいい」
「……………………」
「会えないほうがいい」
それだけ言うと、は掴んでいたアレンの手を離した。
そして唐突に振り返った。
「そーゆーことを辛気臭く考えてたおかげで、あのお屋敷の可愛いメイドさんとか、格好いい執事さんとかと、ちゃんとお別れが出来なかったよ。残念だなぁ」
「………………どっちにしろ無理ですよ。フロイドさんが亡くなった今は、皆さん大忙しですから」
「それもそうだね」
やっと見えたの表情は普段とちっとも変わらなかったから、アレンは何となく彼女の顔を見つめた。
黒のコートが首の包帯を目立たせていて、思わず瞳を細める。
自分の荷物をさぐりながら、アレンは言った。
「会いに行けばいいじゃないですか」
「え……?」
目を見張ったの首に、アレンは取り出してきたマフラーを巻いてやりながら続ける。
「エクソシストとしてじゃなくて、ただの“”として」
「……………………」
「それなら何の問題もないでしょう」
マフラーでうまく首の包帯を隠すと、アレンは満足そうに笑った。
「きっとリオンも喜びますよ」
ぽんぽんと巻き終えたマフラーを軽く叩いて、アレンは歩き出した。
の傍を通り過ぎる。
彼女は自分の後をついてくると思ってそうしたのだが、背後から聞こえてきた呟きがアレンの足を止めた。
「でも、“”はエクソシストとしてしか生きられない……」
「え?」
アレンは振り返った。
ちょうどその時近くの木から雪の塊が落ちてきて、の声がよく聞き取れなかったのだ。
「今、何て言ったんです?」
「なんでもないよ。マフラーありがとう」
は微笑んで、アレンと向き合った。
それからしばらくアレンの顔を眺めた。
アレンが不思議に思って見つめ返すと、何だか改まったようにが口を開いた。
「ねぇ。あの戦いが終わったら、あんたに言わなきゃいけないことが出来るって、言ったでしょ」
「え……。ああ、はい」
礼拝堂で彼女と交わした会話を思い出して、アレンは頷いた。
そして振り返っている姿勢から、きちんとに向き直った。
「何ですか?」
「えー……っと。あの、何て言うか」
は少しだけ視線をさ迷わせて、それからがばりと頭を下げた。
「胸倉掴んで、さんざん自分勝手なこと怒鳴ってごめんなさい!」
「はぁ?」
「いやもう、怒ってるのはわかってるんだ!私があんなことされたらとりあえず胸倉掴み返してぶん殴ってるもん!!」
「ええ?」
「それでもあれは私の信念っていうか、絶対譲れないものであって……ってこんなことが言いたいんじゃなくてつまり!!」
はひとりでジタバタして後、戸惑うアレンに指を突きつけた。
何だかその顔は真っ赤だった。
「それでも一緒に戦ってくれたってことは、あんたは私の仲間ということだよね!あってる!?」
激しい勢いで同意を求められて、アレンはぽかんとしつつも首肯した。
呆気にとられてはいたが、それは本心だった。
「はい。仲間です」
「うん!」
「本当の」
命を守るために戦い抜き、世界を終焉から救うために生き抜くと誓った、本当の仲間。
それに頷いたアレンに、は告げた。
「だったらこれから私達は付き合いが長くなるに決まってる。もういっつもケンカばかりで気が合わなくても、それでも仲間なわけ。だから……」
そこでは不本意そうな顔になった。
けれどそれは少しだけ、わざとのようにも見えた。
突きつけられていたの指が引っ込み、その右手がそのまま下りる。
そしてそれがアレンの前に差し出される。
はアレンを見上げて、変にぶっきらぼうに告げた。
「だから、握手」
アレンは目を見張った。
の赤くなった頬を見つめながら、その声を聞く。
「よろしく、アレン」
アレンは思わず沈黙した。
何だか真っ白になった頭の隅で思い出す。
出逢ってすぐのことだ。
よろしくと言って差し出したアレンの右手を、は取らなかった。
その理由は簡単で、造り物の感情でアレンがその言葉を口にしたからだった。
だから今、彼女が握手を求めたということは、“本当”なのだ。
本当に、それを望んでいるからなのだ。
アレンが黙っているから、は居心地悪そうに瞬いた。
アレンはそっと口を開いた。
「…………僕の名前」
「え?」
「僕の名前、覚えてないって、ずっと言ってたよね」
「ああ……。うん、ごめん。でも」
陽の下で、金の髪が輝く。
光が瞳の中で踊る。
は微笑んだ。
「もう忘れないよ」
ああ本当にすごいな、とアレンは思った。
あのが僕の名前を覚えて、一度は拒んだこの手を求めているだなんて。
何だか胸の中が熱かった。
アレンは右手を持ち上げて、のそれへと伸ばした。
そして彼女の手を掴むと、そのまま強い力で引き寄せた。
音が消え、ふたつの影がひとつになって、そして。
「い……、痛い……っ」
がうめいた。
同じくアレンも無言で痛みに耐えていた。
互いの額は、ぶつけ合って赤くなっていた。
至近距離でが叫ぶ。
「いきなり何するの!?」
「い、いや……。何となく」
「何となく?何となくで頭突きってどういうこと!?」
「ちょ、本気で痛い……っ、石頭なんじゃないですか!?」
「そんなわけないでしょ、私の頭は優しさで出来ているから柔らかいの!」
「すみません、その発言から君の頭が弱いことがよくわかりました!!」
「あ゛ーもう!何なのホント意味わかんない、とにかく痛いー!!」
涙目でひんひん言うを眺めながら、アレンは思った。
本当に自分は何がしたかったんだろう。
何故だか急にを引き寄せたくなったのだ。
それでどうするかなんて考えていなかったから、互いの額をぶつけ合って、結局痛い思いをしたわけである。
とにかくアレンは握ったの手を上下に振った。
「あー……、えっと、ごめんなさい。それと」
いまだに額をくっつけたままで、二人は見つめ合った。
どちらも涙のにじんだ瞳で痛みに耐えているが、それでも視線を逸らさない。
アレンは微笑んだ。
痛かったけれど、それよりも勝手に口元が緩んでしまったのだ。
「よろしく、」
胸の中が、熱かった。
こんな感情なんて知らなかった。
知らずに生きてきた。
でもそれはきっと嘘で、本当は気づいていた、けれど目を逸らしていたんだ。
ただアクマを破壊するために生きて死のうと決めていたから、見つめてはいけないと思っていたんだ。
優しさで隠して、どこにも心を預けないで、曖昧な感情で微笑んで。
けれど今抱いている気持ちは、そんなものを跡形もなく吹き飛ばしてしまうくらい鮮明だった。
心の底から、暖かい感情が湧き上がってくる。
それがアレンをどこまでも素直に微笑ませた。
その笑顔を見つめて、も微笑んだ。
見張っていた金の瞳が優しくなって、そして唇が温もりを紡ぐ。
「うん、よろしく」
そして彼女は僕の名前を呼んだ。
「アレン」
引き寄せたい、と。
また思った。
それはきっとこんな距離じゃ、足りないと感じたからだ。
けれどアレンがの手を強く握り返したその時、汽笛の音が鳴り響いた。
ふたりは飛び上がるくらいに驚いて、同時にそちらの方向を振り返った。
「げっ」
「まずいですね」
顔をしかめて、苦い声で言い合う。
「汽車に乗り遅れる!」
「急ごう!!」
アレンとは雪を蹴立てて走り出した。
晴れた空の下を、駆けていく。
どちらが先を行くこともなく、どちらが置いていかれることもなく。
ふたりは並んでロンドンの街を走り去っていった。
お、終わった……!『永遠の箱庭』、無事終了です!
すごく長かったですね。書き上げることができてよかった……。
最後の最後、アレンとヒロインが握手をかわすシーンがずっと書きたかったところです。
ここまで引っ張るために、初対面の握手がなかったり、なかなかアレンの名前を呼ばなかったり。
二人にはお互いを認め合って、その上で握手をしてもらいたかったのです。
次回からは昔話が始まります。アレン以外のキャラにヒロインとの思い出を語ってもらいます。
初っ端からオリキャラのグローリア(ヒロインの師匠)が出ますので、ご注意を。
|