ねぇ、あなたは覚えてる?
この胸の中の、あたたかな記憶。
それはまるで、咲き誇る花のように。
● 花咲く記憶 EPISODE 3 ●
は数時間前から少しも動いていないかのように、まったく同じ場所に立っていた。
起立した孤独がそのままそこに存在していた。
彼女が上着を着ていないのを見て、リナリーは自分にかけられていたコートの持ち主を悟った。
凍てついた聖堂の中で、は震えていた。
右手がその華奢な左腕を掴んでいる。
指先を突き立てて、何かを押さえ込むようにして。
袖に滲んだ赤を見て、リナリーは混乱した。
血が出るほどきつく己を握り締めて、彼女は一体何に耐えているのだ。
「泣くな」
呻き声が聞こえた。
それは静まりかえった夜、空虚な聖堂でなければ、決して誰にも届かないような声だった。
「泣くな、死に損ない」
は震える己自身に命令をした。
これまでも、何度もそれを繰り返していたようだった。
「耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ、そんな権利はないんだ、絶えてしまえ」
重複される罵りの言葉、自分を死に損ないだと蔑んで、は震えていた。
リナリーは眼前にある光景の意味が、よく呑み込めなかった。
映像を網膜に写し、鼓膜は音を捉えているのに、リナリーはそこに存在をしていないようだった。
それはが、その目覚めに気がつかずにいるからだろうか。
違う、そうじゃない。
の世界が目の前に広がっていて、リナリーの理解がそこから締め出されているのだ。
「甘えるな。私の命は泣き叫ぶことを許されていない」
凍える息を吐き出して、は血まみれの右手をほどいた。
両手を力なく垂らして顔をあげる。
掲げられた十字架を見上げる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、涙も哀悼も出来なくて。私は私の勝手な意地のために、当たり前の感情ですら捧げられないのです」
それはどこまでも平坦な声だった。
意識的に、一切の情を排除したものだった。
独白は謝罪だった。
そして、戒めだった。
「私は弱いから、一度膝を折ってしまえば死んでしまう。痛がりな過去の私に殺されてしまう。私はもう自分を失うわけにはいかないんです」
はそこで細く息を吸った。
「“”まで、殺されてしまうわけにはいかないんです」
落ちてしまいそうになる視線を彼女は無理に振り上げた。
金の髪が揺れて、光を零した。
闇の中でさえ、は輝いて見える。
その誇り高い痛みが、深い闇を照らしていた。
「ひどい奴だという自覚はあります。だから許さないで。誰も私を許さないで」
それはまるで祈りの声だった。
「代償こそが罰だから。痛みも苦しみもつぶれるまで背負うから。“”を生かすのは、負い目だけなのだから」
美しい声が世界を侵していった。
残酷な仕打ちで、は自分自身を痛めつけていた。
リナリーは硬直していた。
目の前でただただ謝罪を口にし、それでも許しを拒絶する少女の存在に、呼吸を殺されてしまった。
「救いの手はいらない。差し伸べられるべきは世界だ。そこに生きる優しい人たちだ。残酷な終焉はあの日の私だけのものよ」
は静かに宣言した。
それは神への確かなる懇願だった。
「お願い、誰も“私”を許さないで」
リナリーは咄嗟に立ち上がった。
大きな音がした。
棺に膝をぶつけてしまったのだ。
けれどそんなことはどうだってよかった。
こんな小さな痛み、どうだってよかった。
が弾かれたように振り返った。
見開かれた金の瞳が、リナリーを捉えた。
沈黙。
リナリーの目覚めを知らなかったは、突然のことに驚き、さらに戸惑うように視線をさ迷わせた。
何故ならそれはあってはいけないことだったからだ。
リナリーはの独白を聞いてはいけなかった。
そしてはそれを誰にも聞かせてはいけなかったのだ。
は微笑んだ。
変な笑顔だった。
それは苦痛に耐えて、無理に表情を笑みの形にしただけだった。
「リナリー……。起きたんだね」
「……………………」
「大丈夫?落ち着いたのならコムイ室長のところに帰った方がいいよ。絶対に心配してる」
リナリーは無言で首を振った。
それからよろよろとに近づいていった。
するとは驚いたように半歩後ずさった。
それがリナリーを苛立たせた。
速度をあげて迫っていく。
「リナリー……、なに」
「どうして」
口が勝手に動いていた。
リナリーはの眼前で足を止めて、責めるように言った。
「どうしてわざと自分を傷つけるの?」
わざとだ。
はその意思でもって、罪を責められることを望んでいるのだ。
涙を流さないのも、哀悼の意を示さないのも、そうすることで自分を罰しているのだ。
「どうして」
「……必要だからだよ」
「答えになってないわ」
「ごめんね。言えないんだ」
「そんなことは知ってる!」
リナリーは甲高い声で怒鳴った。
はどうしてリナリーが怒っているのかわからないのだろう、困ったように瞬いた。
「知っているのなら聞かないで。話したら駄目だって、ブックマンのじーさんに言われてるんだ」
「そんなことを聞いてるんじゃないの、私は……っ」
そこでリナリーは唐突に理解した。
自分はが泣いて欲しいのだ。
初めて会ったあのときのように。
もう一度、あのときの彼女に会いたい。
あの女の子が、本当に殺されてしまっただなんてことは、嫌なのだ。
変わってしまったのだと理解しても、そんなことは、やはり認めたくないのだ。
あんなひどい絶望を、そのために失われた彼女の大切なものを、否定されたくない。
あの少女が消えてしまったなんて、信じられない。
だって、彼女は似ているのだ。
哀しみに壊れかけた、過去の自分に。
「やめてよ……、もう」
言っているうちに涙が出てきた。
違う。
泣きたいのは私じゃない。
本当に泣いてほしいのはのはずなのに。
あの日泣いていた、彼女のはずなのに。
「あなた、変よ……」
「そうかな」
「変よ、おかしいわ……っ」
「リナリー……」
は本当に困っているようだった。
戸惑いに瞬いて、瞳は微かな恐怖に揺れていた。
リナリーはその金色の双眸を見つめながら、彼女は涙を怖がっているのだと、漠然と思った。
「ごめん……。今泣かせているのは私なんだね」
はポケットを探ってハンカチを取り出し、リナリーに差し出した。
リナリーは受け取るかわりに言った。
「あなたは泣かないのね」
「………………」
「どうして?」
黒い瞳から涙を流しながらリナリーは問いかけた。
真っ直ぐに見つめると、は体を強張らせた。
それからどこか諦めるように吐息をついた。
「“”でいるためだよ」
「何よ、それ……」
「契約が終わるまで、私は“”でいなくちゃいけない。だから今はまだ、涙で世界を滲ませるわけにはいかない。哀悼の意で心を満たすわけにはいかない」
「……………………」
「意思をゆるめちゃいけないの。それだけが、“私”という存在に許された証だから」
「…………おかしいわ、あなた」
そっと頬に押し付けてくるハンカチをから奪い取って、リナリーは囁いた。
ひどい。
やっぱりこの子はひどい。
“”に対するこの子の態度はひどすぎる。
リナリーは止まらない涙を流しながら、取り上げたハンカチをの頬に差し出した。
乾いたその白い肌に押し当てる。
「あなたは泣いてるのに」
は息を呑んで、また後退した。
けれどリナリーはそれよりも早く距離を詰めた。
「初めて会ったときの“あなた”が泣いてるのに」
「リナ……」
「殺すのね、本当に」
もうどうしようもなかった。
呆然とした目のが痛々しくて、哀しくて、どうにかなってしまいそうだった。
リナリーはハンカチを振り捨ててに抱きついた。
まるで彼女を殺す何かからかばうように。
「“”として生きるために、そうしなくちゃいけないのね」
「…………………」
「そんなのひどい……、どうして」
揺れて、滲み、崩れる世界。
リナリーは懸命に腕に力を込めて、彼女を繋ぎとめようとした。
初めて会ったときの“あの子”を引き止めたかった。
どんな事情があるのかなんて知らない。
そんなことはどうだっていい。
何者の進入も拒絶する、彼女の世界に触れたかった。
孤独に立ちすくむあの子を抱きしめたかった。
だってこんなのはあまりにひどすぎる。
「どうしてこんなひどい選択を受け入れたの」
別の人間になる。
それはどういうことなんだろう。
リナリーには想像しかできない。
確固たる自分を消去する。
優しい思い出も、愛しい人も、何もかもを捨て去る。
考えただけで身がすくんだ。
恐ろしくて全身が冷たくなった。
それは己自身で全てを否定し、支えをへし折り、心を粉々に砕く行為だ。
耐えられない。
自分には耐えられない。
それを平然とやってのけただからこそ、リナリーは理解することが出来なかったのだ。
けれど本当は違った。
それはリナリーの思い込みだった。
そう思ってしまうほど、“”は完璧だった。
完璧な、強がりだったのだ。
「あなたはやっぱり同じ人よ」
震えて泣き、絶望に震えるあの時の孤独な少女。
「私は“あなた”を覚えてる」
抱きしめたの体が震えた。
今にも消えてしまいそうだった。
だからリナリーは必死に彼女に縋りついた。
「“”になるために、“あなた”を殺して、心の奥底に押し込めなければいけないのね」
「…………っ」
「そんな選択を強制させられたのね」
の強張った体がぶるりと震えて、それから微かに首を振った。
金髪が、リナリーの濡れた頬を撫でていった。
「違う、私が選んだの。あの時の“私”が、今の“私”を選んだの」
「どうして」
「言えない。……言わない。そんなことを聞かせても、あなたが痛いだけだから」
はぽんぽんとリナリーの背を撫でた。
「ごめんね、“私”は弱いから、“”でいるためにはこうするしかないの。ひどく不器用で幼稚な方法だってことはわかってる。でも、それでも」
「強がって、泣かないで、耐え続けるの?独りで……」
「……そうしないと、また過去の“私”に戻ってしまうから」
はリナリーの肩を掴んだ。
引き離されるのだと思って、リナリーは手に力を込めた。
彼女を放してなるものかと思った。
殺されて消えてしまう“あの子”を。
「それでも私は知ってる」
「リナリー」
「“あなた”を知ってるわ。“あなた”は震えているのよ。泣いているのよ。お願い、それだけは否定しないで」
「……私は“”だよ」
「それでもきっと、これだけは殺せないのよ」
死を悼み、哀しむ心は。
「“あなた”は悲しいのよ」
その言葉には微笑んだようだった。
気配でそれがわかった。
リナリーを掴むの手に力がこもる。
「どうしてリナリーが私のために泣くの?」
「………………」
「あなたは私のことが嫌いなのだから、放っておけばいいのに」
は微笑んでいた。
苦く、切なく、哀しげに。
「放っておいてくれれば良かったのに……」
囁く声が震えた。
掴まれていた肩を引き寄せられた。
温もりが、確かにリナリーを求めた。
リナリーが、彼女を求めたのと同じように。
そうすることでは震えをなんとか殺そうとしたようだった。
けれどわななきは止まらず、むしろ全身に伝わっていった。
「そうすれば、弱い“私”は跡形もなく消え去ることが出来たのに……っ」
二人の少女は強くお互いを抱きしめあった。
冷たい空気に包まれて、それでもその凍てついた世界を拒絶するように。
独りでは無理だった。
立っていることも出来なかった。
けれど二人だった。
二人でいたからそこに存在していることができた。
リナリーの涙は止まらない。
それはやはりが泣こうとしなかったからだった。
けれど震える全身が、慟哭していた。
彼女の底に潜む、決して殺すことの出来ない“あの子”が泣いていた。
だったら私が泣けばいい。
“”の涙まで、流してあげればいい。
私は確かに“あの子”を知っているのだから。
起立するたったひとつの孤独は、優しい温もりに支えられて、ゆっくりと溶けていった。
床に座り込むと飛び上がるほど冷たかったから、のコートを敷いて二人でそれに包まった。
お互いに強い感情を吐き出して、何だかぼんやりそこにいた。
は暖かかった。
ああ本当に人間なんだなと、リナリーは思った。
何だか今までは、そうだとわかっていても、彼女は自分と別の生き物に思えていたのだ。
けれどは人間だった。
哀しみと絶望、弱い自分に負けまいと必死に足を踏ん張る、ひとりの人間だった。
「私は」
が囁いた。
身を寄せているから小さな声でも充分に届いた。
「私はやっぱり、“私”を殺してしまったんだと思う」
「…………“”になるために?」
「うん……。完全に消し去ることは出来なくても、もうあのころの私には戻れない。……戻りたくない」
はぎゅっと自分の膝を抱きこんだ。
そうすることで孤独を押さえ込んで、過去の己を放棄する。
その強い決意に満ちた瞳は、真っ直ぐな光を宿していた。
「私はそれを許さないし、世界も認めてはくれない。拒絶され、排除される」
「……………」
「でも……」
そこでは微笑んだ。
リナリーを見つめて笑顔を浮かべた。
それは同性のリナリーでも見とれてしまうほど、綺麗な笑みだった。
「でもあなたは、たったひとり、何の他意もなく“私”を覚えていてくれたんだね」
リナリーは目を見張った。
その黒い瞳にいっぱいになって、が微笑んでいた。
それは少しだって失くしたくないような、純粋な暖かさだった。
「こんな“私”のために泣いてくれて、ありがとう」
「……………」
「でもリナリー。もう……」
「嫌よ」
言われる前にリナリーは首を振った。
手を伸ばして、のそれを握る。
胸に引き寄せて口を開く。
「駄目よ。忘れてなんて言わないで。私ひとりだけでも許して」
言っているうちにまた涙が出てきた。
ああこの人を前にしていると、感情が際限なく湧き上がってくる。
ただひたすらに、願ってしまう。
「拒絶でも排除の対象でもなく、私が覚えていたのなら、いつか“”が“あなた”に戻れるかもしれないわ……っ」
それが、途方もない祈りだということは、の表情を見ればわかった。
彼女はそれを望んではいないし、世界も容認してはくれないのだろう。
けれど願わずにいられなかった。
悲しかった。
今までの何もかもを捨てて、孤独になって、いまだに支えも温もりも求めない“”が悲しかった。
彼女はやはり自分と同じなのだ。
哀しみに壊れそうになっていた、昔の自分と。
私は兄さんが救ってくれた。その暖かい手で抱きしめてもらえた。
けれど“”は本当に独りぼっちなのだ。
それを受け入れて、必死に生きていこうとしているのだ。
だからこの言葉はあなたを弱くさせるだけかもしれない。
けれどリナリーは知っている。
差し伸べられた手の温もりと、懐かしい笑顔の優しさを。
「“”が“あなた”に戻れるまで、私は“あなた”を忘れない。強く前に進んでいく、“”を見てる。でも、ねぇ、そのために私は何が出来る?」
リナリーはの手を強く握り締めた。
「あなたのために、私は何が出来る?」
聖堂の丸い天井にその声は響いた。
まるで天から降ってくるようだった。
冷たい夜の底で二人の少女は身を寄せ合って、手を握り合って、互いを見つめていた。
髪も瞳も正反対の色で光る。
輝く星と、優しい夜ようだった。
ふっ、とが破顔した。
そしてにこりと笑った。
「リナリーはかわいいなぁ」
あまりにも気の抜けた声だったので、リナリーは変な顔をしてしまった。
きょとんと目を瞬かせると、の手が頬に触れた。
「うーん。目の保養」
「え……、ちょっと、何の話……?」
「リナリーはかわいいって話」
緩んだリナリーの手から自分のもう片方の手を引き抜いて、は言った。
そして両の掌でリナリーの頬を包んだ。
「でも知ってる?女の子が一番かわいいのは笑っている顔なんだよ」
「だから、何の話なの……?」
「だから、リナリーにはもう泣いて欲しくないな、っていう私の自分勝手な話」
リナリーは口を閉じた。
その濡れた頬をの指先がぬぐってくれた。
「この涙の原因である私が、そう言うのはひどいかな」
「………………」
「でもそれが本当に目の保養になるんだよね」
慈しむようなその笑みに、リナリーは思った。
は知っているのだ。
笑顔の魔法を。
自分が、誰かが、微笑むことで確かに何かが救われるのだということを。
大切な人の微笑みが、絶望の闇に覆われたとき世界を照らしてくれるということを。
「お願いリナリー、笑っていてね。それはきっとコムイ室長やグローリア先生、この教団のたくさんの人たち、そしてあなたを元気にしてくれるのだから」
「………………それが、私に出来ること?」
「うん、だってリナリーは笑顔が一番かわいいんだもの」
明るくそういわれてリナリーは驚いた。
そして少し気まずく思いながら呟いた。
「でも……。私、あなたの前で笑ったことないわ」
「あるよ」
言い切られて混乱する。
そんな記憶はない。
けれどは微笑んだままだ。
「初めて会ったとき」
「え……。あ!」
思い出してリナリーは目を見張った。
「あなた、覚えてたの?」
「もちろん」
あのときの彼女はまるで意識がここにないようで、話しかけるリナリーのことなど、とても眼中に入っている様子ではなかった。
しかし大きく頷くに嘘はない。
リナリーは自分でも驚くくらい胸の内が明るくなるのを感じた。
はリナリーを否定したわけではなかったのだ。
その笑顔を、与えられた優しさを、なかったことにしてはいなかったのだ。
「初めて会った日、たくさん話しかけて、そして笑ってくれたよね。返事をすることは出来なかったけど……。リナリーの笑顔はよく覚えてる」
「本当に?あなた、意識がどこか別のところにあるような顔をしていたのに」
「うん、ごめん……。でも、それでもちゃんと記憶にあるよ」
「どうしてかしら」
「それだけ魅力的ってこと」
あまりにも普通に言われたので、リナリーはしばらくぽかんとしてしまった。
それから頬を染めた。
兄やグローリア、周囲の大人たちに“可愛い”と言われることは多々あったが、同じ年頃の子に、こんなことを言われたのは初めてだ。
それもこんなにストレートに。
さらには容姿こそ美しい少女だが、少しばかり男の子みたいな言動を取るときがある。
師であるグローリアに習っているのか、それとも素なのかはよくわからない。
とにかく女の子を絵に描いたようなリナリーとは、大分異なる性格をしていた。
そのためリナリーは、何だか妙に照れてしまったのである。
はそんなことには気づかずに、リナリーの頬を両手で包んだまま続けた。
「だから笑っていてね、リナリー。私もそれを陰ながら眺めて、勝手に元気になってるから」
「……陰ながら?」
「陰ながら。あ、ちょっと変態っぽいかな」
「ううん、そういうことじゃなくて……」
「め、迷惑だったらごめんね!」
「そうじゃなくて!どうして陰ながらなのよ」
「だってリナリー、私のこと嫌いでしょ?」
責めるでもなくあっけらかんと訊かれて、リナリーは思い出した。
ああそういえば、そうだった。
自分はこの子を苦手だと、関わりたくないと思っていたんだ。
何故ならわからなかったからだ。
過去の自分を簡単に殺して別人になった彼女が、どうしても理解できなかった。
けれどそれは間違いだった。
は簡単に、そのひどい選択を選んだわけではない。
彼女はただ、踏ん張って、必死になって、強がっていただけだ。
弱さを誰にも見せようとしない、小さな子供だった。
震えに耐え、絶望に屈服しない心を保とうと、ひたすら努力している人間だったのだ。
信念のある人は好きだった。
それには愛する兄や、尊敬するグローリアに通じるものがあるからだ。
だからリナリーは微笑んだ。
そしてが自分にするのと同じように、彼女の頬を両手で包んだ。
「ねぇ、嫌いな人に笑顔を見せると思う?」
がその綺麗な瞳を見開いたから、そこに自分が一杯に映るように、リナリーは微笑みを深めた。
涙が混じっていたが、きっと大丈夫。
だって心がこんなに暖かいのだから。
「私は笑っているわ。コムイ兄さんやグローリアさんや、教団のみんなのために」
それが力になるのだと、あなたが言うのならば。
「一所懸命、笑っているわ。あなたのために」
「リナリー……」
「だからあなたも笑っていてね。それを望んでいる人たちと、あなた自身のために」
「………………」
「そして、私のために」
あなたが笑っていられるのなら。
どうかその細い肩を支える手や、心を温めるぬくもりを得られるのなら。
祈りながら、リナリーは微笑んだ。
弾みで涙が零れ落ちた。
けれど笑みは決して消えなかった。
「笑っていてね。」
笑顔で見つめると、は瞬いた。
瞳が少しだけ滲んで、それを食い止めるためのようだった。
触れる手の暖かさを感じながら、二人は額をこつんと合わせる。
が笑った。
まるで返事のように。
それはやはり見とれてしまうほど、あたたかい笑顔だった。
「ほら、やっぱり」
揺れる瞳、笑顔の中で二人は見つめ合った。
「あなたは笑顔が一番かわいいよ。リナリー」
それはこっちの台詞だと言いたかったけれど、リナリーは何だかもう声が出なかった。
涙も止まらないから、が抱きしめてくれる。
どうして泣いているのかなんてわからなかった。
ただ胸が熱くて、どうしようもなかったのだ。
耳元での声が“ありがとう”と囁いた。
優しく揺れるその言葉に、リナリーはまた微笑んだ。
それはきっと彼女も同じ気持ちなのだと、考えなくてもわかったからだ。
涙で滲んだ視界に、の髪が輝いている。
まるで光の色だと、リナリーは考えるでもなく、そう思ったのだった。
「ちょっと待ってください」
「ちょーっと待つさ」
アレンとラビは同時にスットプを要求した。
突き出した手の動きまで一緒だ。
そんな二人の視線の先で、リナリーは薄紅に染まった頬に手を当て、感動のため息をついた。
「どうして止めるの、二人とも。今とってもいいところだったのに」
「いえ、いい話だったのは認めます。感動的でした。まさか二人にそんな過去があったなんて」
「うんうん、そうやって二人は友達になったわけだな。すっげぇ友情劇!それはいいんさ」
「ええ、いいんです」
アレンとラビは互いに頷きあって、それから叫んだ。
「でもそれって口説いてますよね!?」
「の奴、思いっきりリナリーのこと口説いてるよな!?」
「それがどうかしたの?」
何だか微妙に顔を青くして言うふたりなど眼中外で、リナリーはうっとりと手を組み合わせた。
瞳は熱に潤み、キラキラと輝いている。
まるっきり恋する乙女の顔でリナリーは呟いた。
「あんなこと言われたのは初めてだったわ……。今でも鮮明に覚えてる」
「……それはそうでしょうねぇ。その歳で“ずっと笑っていてね”だの、“笑顔が一番可愛い”だの言う同年代の子は、まずいませんからねぇ……」
「しかも泣くまいとするいじらしい姿を見せられた後でだもんなぁ。何さコイツ確信犯か!!」
アレンは激しくげっそりした様子で、ラビは半分キレながら、いまだに眠っているを見下ろした。
しかしその顔はやっぱり見慣れた美少女然としたものだったから、アレンは半眼になる。
「リナリー、現実をよく見てください。これは女の子ですよ。君と一緒の性別である、女性です」
「あら。そんなの関係ないわ。好きだと言ってもらえて嬉しくない人なんている?」
「でも……」
リナリーの高揚した顔をみていると、何だかとっても複雑な気持ちになってくる。
いくら女の子同士とはいえ、がモテるとなると妙に面白くない。
とりあえずその恋しているような態度はやめてください、とアレンは言おうとしたが、それより先にリナリーが口を開いた。
「だったら考えてみて。に大好きだって言われたら、アレンくんだって嬉しいでしょう?」
「…………………………」
アレンは思わず黙り込んだ。
唐突に何を言い出すんだ、と考える。
けれどそれよりも反射的にそれを想像しようとして、アレンは硬直した。
有り得なさ過ぎて怖い。そんな現象。
けれどもし、本当にそんなことになったら、自分はどうなるんだろう。
視線をじっとの寝顔に据えてみる。
「これに……、“大好き”……、ですか」
「そう。嬉しいでしょう?」
「あー、確かにそう言われたら嬉しいな。実際にそうだし」
さらりとラビは肯定した。
アレンが羨ましくなるくらいハッキリした答えだった。
けれどその途端、リナリーの纏う雰囲気がガラリと変わる。
「……そうよね。ラビはよく言われてるものね」
「な……っ、何で睨むんさ!」
「あら。嫉妬に決まってるじゃない」
何だか剣呑な雰囲気が横に発生しているようだったが、アレンは気にしなかった。
そんなことに構っていられるほど、頭に余力がなかったのだ。
全神経を使って思考する。
「に、“好き”、か……」
うーんと呻って彼女を見つめる。
何だか遠いから向かいのソファーまで歩いていって、床にしゃがみこんだ。
そうするとの寝顔が目と鼻の先になる。
間近で覗き込んでみると、本当に睫毛が長かった。
透けるような白い肌と、わずかに開いた花色の唇。
何だかあまりにも幸せそうな顔をしていたから、アレンは当初の目的も忘れて鼻でもつまんでやろうかと考えた。
呼吸を塞がれて苦しみもがく姿はさぞかし面白いだろう。
アレンはいたずらっぽく笑って手を伸ばした。
しかしその時が呻いた。
「んー……」
ギクリと停止したアレンの視線の先で、の唇が動く。
「す……」
「え……?」
「き」
今、何て?
アレンがもう一度よく聞こうと身を寄せると、今度はもう少しハッキリした声がした。
「す、き……」
語尾は寝息に混じって消えてしまったが、確かにそう聞こえた。
寝言?
夢の中で誰かに“すき”だと言っている?
アレンはそう理解して、思わずムッとしてしまった。
やっぱり鼻だけではなく口も塞いでやろう。
きっとものすごくマヌケにもがいてくれるはずだ。
それぐらいしてやらないと何だかこの不機嫌さはおさまりそうにない。
幸運なことに、の頭を膝に乗せているリナリーは、ラビとの睨み合いに忙しいようだった。
これぞチャンスとばかりにアレンは狙いを定めた。
すると今度は名前を呼ばれた。
「アレン」
がそう呼んだ。
目は閉じられているし、むにゃむにゃしてるから確実に寝言だ。
けれどまさか彼女の口から自分の名前が飛び出すとは思ってなかったから、アレンは本当に驚いた。
リナリーやラビも気がついて、に視線を落とす。
三人が見守る中で、がまた呟いた。
「アレ、ン……、すき」
今度こそアレンは完全に硬直した。
一瞬、脳内の言語機能がまったく使いものにならなくなった。
それから真っ白な時間があって、なんとか言葉の意味だけは理解する。
聞きなれたの声が、聞きなれないにもほどがある言葉を紡いだことを認識する。
その途端、アレンは真っ赤になった。
咄嗟にどうすればいいのかわからない。
混乱して、彼女から離れようとした。
けれどそれより早くがまた口を開いた。
「すき……」
「……っ」
「すきありーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
唐突にが跳ね起きた。
そして激しい威力を持った蹴りが繰り出される。
風が猛烈な勢いで流れた。
アレンは反射的に、ほとんど勘で身を低くした。
一瞬の遅れもなく、先刻まで頭があった空間を華奢な足が蹴り裂いていく。
アレンは追撃を予想して大きく後退したが、はそれっきり動かなかった。
白い脚が戻り、翻った黒のスカートとなびく金髪がおさまっても、まだソファーの上に立っていた。
何だかフラフラしている。
その金色の瞳はほとんど開いていなかった。
「ふふん……、隙ありだよアレン……」
寝ぼけた声でが言った。
「駄目もとで“隙あり”っていい続けたら、本当に隙をみせるとは……、これで私の勝ちは決まりだね……。だいじょうぶ、積もり積もった恨みをその上品ぶった顔に叩き返すだけだから……」
はへらへら笑ってソファーに座ると、リナリーのスカートを引っ張った。
リナリーが素直に膝を差し出すと、そのうえにころんと頭を乗せる。
そうして満足そうに微笑むと、再び寝息をたて始めた。
アレンはまだ硬直していたが、が愉快そうに笑っているのを見て、全身の感覚が遠のくのを感じた。
同時に頭に血がのぼる。
この馬鹿はきっと自分と勝負をしている夢を見ていたのだ。
そして今はこちらをコテンパンにするという、不愉快きわまりない続きになっているところに違いない。
それに何だ。
すき?
何だその寝言。
最初からハッキリ“隙あり”って言え!!
「ふ。ふふふふふふふふふふふ……っ」
「ア、 アレン……?」
引き攣る唇から勝手に笑い声が漏れてきた。
地を這うような不気味なそれに、ラビが怯えた声を出す。
恐ろしく暗いオーラを纏いながら、アレンは微笑んだ。
「相変わらず素敵ですよ。何て潔い人なんだろう……。ああ胸が苦しいです」
ひとりでぶつぶつ言いながらアレンは胸元を押さえた。
実を言うと本当に苦しかったのだ。
銀灰色の瞳を伏せて、切ないため息を吐き出す。
「どうすれば君へのこの気持ちを余すことなく伝えられるかな……。そう、この殺意をね!!!」
「ちょ……っ、待て待てアレン!落ち着くさ!!」
躊躇なくイノセンスを発動してに掴みかかろうとしたアレンは、ラビの手によって引き止められた。
背後から羽交い絞めにされる。
アレンは怒りに瞳を燃やし、それを振り払おうと本気で暴れた。
「離してください!あの馬鹿、許せません!もう絶対に許せません!何だあの幸せそうな顔!!腹立つ腹立つ腹立つー!!!」
「ただの夢だろ、そんなに怒ることじゃねぇさ!!」
「ああ夢ですか。夢いっぱいで胸いっぱいですか。よし、ぶちのめしてきます。離せー!!」
「いやいや“よし”じゃねぇさ!ちょ、マジ危ねぇ!ストップストップ!!」
引き止めるラビから逃れようとアレンは本気で抵抗しているので、発動している左手がぶんぶん空をきる。
ラビはそれの直撃を必死に回避しながらリナリーに訴えた。
「リナリー、を起こしてくれ!このままじゃアレンに殺られる!!」
「あら。そんなの嫌よ」
「何でさー!?」
「はお疲れなの。ぐっすり眠ってるの。起こすなんて可哀想よ」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇんだって!むしろ可哀想なのはオレだし!!」
半泣きのラビの即頭部をアレンの左手がかすめ、赤い髪がバラリと舞った。
もう少しで頭を持ってかれそうだったラビを見て、それでもリナリーは冷静である。
「大丈夫。アレンくんはちょっとはしゃいでるだけよ」
「あり得ねぇ!リナリーその解釈、絶対におかしいって!!」
「だって間違いだったとはいえ、に好きだって言われたんですもの。嬉しくないはずがないわ」
リナリーは両手を胸の前で合わせて、軽く首を傾けた。
瞬間、アレンの動きが止まった。
大きく目を見張ってリナリーを凝視する。
その視線を受けながら彼女は微笑んだ。
「そうよね、アレンくん?」
「………………」
「でもちょっと喜びすぎよ。なぁに?誰をぶちのめすって?」
「………………………………」
「ねぇ、をどうするの?詳しく教えてくれないかしら」
「………………………………………………」
アレンはリナリーの完璧な笑みを見て、数歩後ずさった。
背後にいたラビも一緒ににじりさがる。
二人は仲良く顔を真っ青にしていた。
冷や汗をだらだら流して黒髪の少女を見つめる。
怖い。何だかものすごく怖い。
ラビはもとからリナリーより立場が弱いし、根が紳士のアレンは女性に対して強気な態度に出られるはずもない。(は例外だ)
さらにリナリーの言葉は表面こそ穏やかだが、その裏に凄まじい激情が迸っていた。
それをわかりやすく解釈すると、“に間違いでも好きだと言われただけでも腹立たしいのに何を怒ってるんだ彼女に危害を加えてみろこちらも手段を選ばないぞ”という感じだ。
本能的にこれには逆らってはいけないと感知した二人は、蒼白なままなんとか笑顔を浮かべた。
「すみません、どうにもが関わると熱くなってしまって……」
「そうそう!アレンはのことになると、ちょっと我を忘れちまうんさ!」
「やっぱりライバルだわ……」
「「え?」」
「ううん、別に。それより暴れるのはやめてね。がまだ寝てるから」
リナリーはにこやかな、けれど決して逆らえない笑顔でそう言った。
アレンとラビは大人しくソファーにもどる。
ああ何だろうこれ。
アレンは冷や汗をかきながら、嫌なことを考えた。
自分がありのままだったり、意地を張ってみたり、強気に言い返したり出来る女性はやっぱりだけなのか。
その事実は何だか妙に居心地が悪かった。
けれどそれは、を“女性”と仮定した場合だ。
女の子扱いが面倒になってくるような彼女の人柄が全ての原因だと結論して、アレンは首をひとつ振った。
それを眺めながらリナリーが言う。
「ねぇ、わかってくれたでしょう?に好きだって言われたら、どんなに嬉しいか」
これはどう答えたものかとアレンは真剣に悩んだ。
とりあえず当たり障りのない答えを口にする。
「まぁ……、好意を示されて喜ばない人はあまりいないと思いますよ」
「あら、アレンくんったら。素直じゃないわね。………………顔、赤かったわよ?」
うわー見られてたんだ!
アレンは思ったが何も言わずに微笑んでおいた。
絡みでリナリーに逆らうのはよそう、と心に深く刻みながら。
リナリーはしばらく細めた黒い瞳でアレンを見つめていたが、ふいに視線を逸らして口を開いた。
「私は嬉しかったわ。に好きだと言ってもらえて」
「はぁ……。そうみたいですね」
アレンは冷や汗をかきながら頷いたが、リナリーの目はいつの間にか真剣な色を取り戻していた。
伏せられた睫毛がその瞳をさらに深い色へと染めている。
「はとても強くて、いつだって独りで凛と立っていた。けれどそのぶん誰にも弱みを見せないし、寄りかかろうとはしないの」
リナリーは手を伸ばして、の頬にかかった長い髪を払いのけてやった。
「支えを求めない、温もりにも縋らない。そんなが悲しかった。だから力になってあげたいと思ったわ。……私は“”になる前の彼女を知っているのだから」
「………………」
「好きだと言ってもらえた私は、きっと傍にいて、出来ることがあるはずよ。いつか……、いつか全ての支えや温もりになってあげられるって、信じてる」
リナリーは静かに囁くと、ぱっと顔をあげて微笑んだ。
「あの日はね、そのまま聖堂で眠りこんじゃって。朝になって捜しにきたコムイ兄さんとグローリアさんの顔、今でも覚えてるわ。二人ともすごく驚いて、しばらく何も言えなかったぐらい」
「……あ、それ覚えてるさ。コムイとグローリアがさんざん心配してたのに、見つけたオマエらは眠い眠い言ってそのまま寝続けたんだよな。あの時の話だったんか」
ラビが思い出したように手を打つと、リナリーは頷いた。
口元を隠してくすくす笑う。
「起きたら延々とどういうことか問い詰められたわ。だから私、言ってあげたの。“と仲良しになっていただけよ”って」
「うわぁ……。これはまたの喜びそうなことを言いましたね」
「それでその日からの口説き攻撃が始まったわけか……」
アレンは何となく冷や汗をかき、ラビは嫌そうに呟いた。
手を繋いで夜を越えた二人は、きっと互いのわだかまりをも溶かしてしまったのだろう。
それは笑顔を交し合ったとき結ばれた、世界の約束だったのかもしれない。
「一度打ち解けてみればすぐだったわ。ほら、ってどうにも目の離せない人でしょう?一度だって同じ顔をしていないんだもの。惹かれるなというほうが無理よ」
「あー、それわかる!当たり前の美人でもバカでもないからな。あらゆる意味で型破りで」
わいわい盛り上がり出したリナリーとラビの横で、アレンは少し微笑んだ。
過去をすべて隠蔽したが、予想以上に異端視されていた事実に重くなっていた心が、何だか明るくなるようだった。
何故ならそれは、彼女がそれでも決して孤独ではなかったのだと、二人を見ていれば考えるまでもなくわかったからだ。
「よかった……」
思わず呟くと、リナリーとラビがこちらを振り返った。
「なぁに?何の話?」
「何がよかったんさ?」
「え……、あ、いえ」
アレンは瞳を細めて微笑んだ。
「こんなでも、リナリーみたいなまともで普通な女の子の友達がいて、よかったなって、思っただけですよ」
それを聞いてリナリーも相好を崩した。
「私も、みたいな素敵な子のお友達になれて、本当によかったと思っているわ」
そうして彼女は心から愛おしそうにの前髪を撫でた。
するりと流れる金髪が、リナリーの白い指に絆のように輝いていた。
「これからもずっと一緒に笑っていましょうね、」
他の誰にも聞こえないように、リナリーは囁いた。
その顔に浮かんでいたのは、どこまでも暖かな笑顔だった。
幸せそうに眠るも、まるで応えるように頬を緩める。
数年前のあの日のように、二人の少女は微笑みを交し合ったのだった。
『花咲く記憶』、別名ヒロインとの思い出話リナリー編、終了です。
やっぱりリナリー書きにくいのでね!いつもより短めです。ゴメンナサイ。(汗)
ヒロインは冷淡になろうとしているのではなく、涙を流すことで弱くなることを恐れていたのです。
リナリーはそんなヒロインを強いと思う反面、自分と似ている過去の彼女を求めています。(恐らく今でも)
この考えかたは、ラビや神田と大きく異なっていますね。
次回からはヒロインとの思い出話ラビ編に行きます。彼は長々と語ってくれそうな予感です。
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