真っ直ぐ筋の通った頑固者。
負けん気が強くて意地っ張りで生意気で、余計なことばかりする面倒くさい女。
初対面の印象は今でも変わっていない。
俺はお前が嫌いだ。
大嫌いだったんだ。
● 泡沫の祈り EPISODE 1 ●
「つまりなに?今まで私との思い出話をしてたの?」
ぼんやりと眠そうな顔でが訊いた。
ソファーに深く腰掛け、隣のリナリーの肩に頭をもたせ掛けている。
再会を祝してじゃれる親友たちをリナリーが引き離し、無理やり保護した結果がそれだ。
アレンはひとつ頷いた。
「そうです。二人ともよく喋ってくれましたよ」
それはもう、自慢気に。
アレンは心の中でそう続けて、笑顔のままをねめつけた。
どうにもこの人は他人と仲良くなりすぎる傾向があるらしい。
彼女の特殊な境遇から言えば、それは己を受け入れてもらうための努力だったのだろう。
それでも何だか少しだけムッとするのは、アレンの勝手だった。
どうにもおさまらないので穏やかに睨みつけてやったが、当のはうつらうつらし始めていた。
ラビとひとしきりはしゃいだからか、再び眠たげな顔をしている。
睡魔がぶり返してきて頭がまともに動いていないような感じだった。
「……いや、普段もあまり動いてないか」
「……ん?なんのこと……?」
「別に」
アレンはぷいと顔を逸らした。
隣でラビがおかしそうに笑ったが放っておく。
すると巡らせた視界の先、談話室の出入り口から誰かが入ってくるのが見えた。
「あ」
アレンが思わず声を出すと、その人物が長い黒髪を揺らしてこちらを振り返った。
しかしアレンの姿を認めると隠そうともせずに舌打ちをする。
相変わらずの態度だ。
彼はそのまま談話室を横切って通過しようとしたが、その前にラビが声をかけた。
「ユウ!何やってるんさ、どっか行くんか?」
明るいその呼びかけに、黒髪の青年は足を止めた。
肩越しに返り見て、ラビをきつく見据える。
「ファーストネームで呼ぶな。何度言わせる」
「そんなの今さらだろ。それよりどしたんさ?」
いつものことだと軽く流されて、神田はまた舌打ちをした。
表情はお馴染みの仏頂面だ。
「鍛錬場に行くところだ」
そこでふと神田は瞳を動かした。
視線の先にはソファーの背から微かに見えている金髪がある。
どうやらがそこにいることに、今になって気がついたようだ。
彼は方向を変えるとずかずかとこちらに近づいて来た。
「いいところにいた。おい、バカ女。手合わせしろ」
言いながらテーブルの横で立ち止まり、を見下ろした。
そして微かに目を見張る。
瞬きをした黒い瞳はの寝顔に注がれていた。
リナリーの肩に軽く身をあずけて、彼女は再び眠ってしまったようだった。
それを見てリナリーとラビが口を開く。
「駄目よ、神田。手合わせは後にして」
「あーあ。また寝ちまったさ」
「一体どれだけ寝れば気がすむんですか、は」
アレンも呆れてため息をつく。
神田は驚いた顔でを見つめていたが、徐々にその視線は険を含んだものに変化していった。
鍛錬に付き合ってもらおうと思ったのに、期待がはずれたからだろう。
右手が動いて『六幻』にかけられた。
しかし抜刀されることはなく、しばらくを睨みつけた後、苛立たしげなため息を吐き出す。
「…………バカ女」
いろいろ思うことがあったらしく、小さく言い捨てると神田は踵を返した。
しかし間一髪でラビが手を伸ばし、そのコートの裾を捕まえる。
鋭い瞳で振り返った神田にラビはにへらと笑った。
「なぁ、ユウ。オレたち今までとの思い出話をしてたんさ」
「……だからどうした」
「オマエも寄ってかね?」
「断る」
取り付く島もなく神田はそう言い切った。
何故そんな妙なことを言い出すのかわからない、という不審がありありと浮かんだ顔をしている。
けれどさすがはあのの親友といえるだろう、ラビはめげずに笑った。
「えー、いいじゃん!」
「よくねぇよ」
「だってオレ気になるんさ。ユウとの出逢いとか、どうやって仲良くなったのかとか!」
なるほど、確かに。
アレンは内心そう思って頷いた。
神田と同じ空間にいるのはアレなのだが、聞いてみたい話ではある。
何故ならよくよく考えてみると、神田との仲が良いということは不思議なのだ。
リナリーは穏やかな性格だし、も女の子には優しい。仲が良いのは納得できる。
ラビとは揃って悪だくみをするのが大好きだ。それはそれは気が合うだろう。
けれど神田とは共通点がないように感じる。
唯一似ているところはその頑固さだが、だったら反発してしまうのではないだろうか。
二人とも確固たる信念をもっているから、何度もぶつかり合っては互いに引かなさそうなのだが。
「出逢い……?」
ふいに神田が呻った。
恐ろしく低いその声に、アレン達は目を見開く。
何だか壮絶な雰囲気を纏って神田は仁王立ちになっていた。
彼は異様に据わった目つきでゆっくりとに視線をやる。
そして瞬く間にイノセンスを発動した。
そのまま当然のように腕を振りかぶるものだから、驚いたアレンとラビが後ろから飛びつく。
「ちょ……っ、何するつもりですか!?」
「急にどうしたんさ、ユウ!!」
「嫌なことを思い出した。おかげであのときの腹立ちが蘇った。だから斬る!!」
「「いやいや、意味がわからない!!」」
そのまましばらく3人で乱闘になった。
それはアレンとラビは神田を羽交い絞めにして必死にがんばり、最終的にイノセンスでやりあって、全員が力尽きてソファーに倒れこむまで続いた。
ぜーはーしながらアレンが顔をあげると、神田はまだきつくを睨んでいる。
リナリーだけがひとり平和に、眠るの髪を撫でていた。
「あら。もうお終い?」
「リナリー……」
少し残念そうな顔をしているのは、を独り占めできる時間が終わってしまったからだろう。
それにしても全ての元凶である金髪の少女には腹が立つ。(幸せそうに寝ているからなおさらだ!)
アレンはげっそりした声音で訊いた。
「神田。一体に何をされたんです?」
「誰が言うか。口にするのも不愉快だ」
「オイオイ、ここまでオレたちを巻き込んどいてそれはないさ!」
「……………………」
「神田!」
「ユウ!」
「うるせぇ!わかったから黙れ!!」
神田は怒鳴り散らしてどさりとソファーに腰かけた。
左右にアレンとラビも座る。
最高潮に不機嫌なしかめっ面で、神田は口を開いた。
「チッ……、何で俺がこんなこと話さなきゃならねぇんだよ」
「まぁまぁそう言わずに。どどーんと始めてくれさ!最初っからな」
「神田とっていつ出逢ったんですか?」
「確か、私やラビよりも後よね」
口々に言うと神田はますます眉をひそめた。
どうにも彼の苦手な雰囲気である。
いつもならが何か言って場をうまくまとめるのだが、彼女が寝ているのだから仕方がない。
神田はアレン達を無視して話を開始した。
「このバカ女と出逢ったのは、俺が入団してすぐのことだ」
そこで神田は皮肉気に唇の片端を吊り上げた。
そして驚くべきことに、こう告げたのだった。
「今でもハッキリ覚えてるぜ。あの血にまみれた初対面をな」
血の匂いが充満している。
目の前の扉からは、痛みに耐えかねた呻き声が聞こえていた。
時間は数年ほど遡る。
その日、そのとき。
神田は本部の廊下、医療室の前に座り込んでいた。
『六幻』を支えにして何とか上半身を起こしていたのだ。
その胸に穿たれた大きな傷と、全身に走った裂傷。
それでも特殊な体のおかげで激痛は徐々におさまりつつあった。
神田は大きく息を吐いて、辺りを見渡した。
夜のような黒玉の瞳を巡らせる。
そこここに怪我人達が転がっているのが見て取れた。
数時間前。
任務中に大量のアクマに襲われ、教団側は大打撃を負ったのだ。
神田もそれに漏れず、不覚ながらこのザマというわけだ。
そして何故こんな廊下に座り込んでいるかといえば、あまりに多い負傷者に医療班の対応が追いつかないのである。
この緊急事態に他の班の者も溢れた怪我人たちを介護しているが、所詮は素人だった。
びくびく怯え、傷を見ては悲鳴をあげる。
特に女共は最悪だった。
何が怖いのかめそめそ泣いて使いものにならない。
神田としてはそんな連中に自分の体に触れられるなど、断じて許せなかった。
きつい眼差しで牽制し、手当てどころか近づくことすら拒絶していた。
一刻も早くこんな場所は立ち去りたかったが、痛みに足が立たないのだから仕方がない。
そんな己自身に腹が立って、ひどく苛立つ。
それでも、もうすぐだ。
もう少しすれば、立ち上がるだけの回復が終わる。
神田は引き裂かれた団服の上から左胸を押さえた。
そこに刻まれた凡字を撫でる。
俺には手当てなどいらない。
傷ならこいつが塞いでくれる。
誰の手も借りてたまるものか。
「あ、あの……」
ふいに声をかけられた。
神田は視線をそちらに投げる。
そこには治療道具を抱えた数人の女性たちが立っていた。
白衣を着ていないから、恐らく医療班の者ではないだろう。
ひとりの女性が無意味に茶色の髪を触りながら言う。
「そ、その、手当てを……」
馬鹿げている、と神田は思った。
目すら合わせず、おどおど言っておいて何が手当てだ。
青ざめた顔と怯えた様子に舌打ちをする。
満足に傷が見られるかも怪しいものだ。
すでに慣れない血の匂いに酔っているのだろう。(涙を拭ってから来ただけマシかもしれない)
神田は彼女たちから目を逸らすと一言だけ告げた。
「いらねぇよ」
「でも……」
まだ何か言おうとする女性たちを無視して神田は目を閉じた。
回復に専念するためだ。
放っておけば彼女たちは別の怪我人の手当てにまわるだろう。
他は軽症者が多いのだから、どうとでもなる。
けれどそのとき別の声が割って入った。
「うわー、これはひどいね」
唐突に目の前からそんな言葉が聞こえてきた。
何だかとっても嫌そうな響きを持っているが、この血まみれの状況では恐ろしく冷静な声でもあった。
「お兄さん、意識しっかりしてる?」
続いてそう尋ねられる。
驚いて目を開き、視線をあげると、医療室から一人の少女が顔を覗かせていた。
女の造作など欠片も興味のない神田だが美醜だけはわかるつもりだ。
そしてその少女はどう見ても、確実に美しい部類に入る容姿をしていた。
右耳の上でひとつに結われた金髪が揺れ、金色の双眸がこちらを見ている。
けれど彼女は白衣を着ていなかった。
それなのにその白い肌が真っ赤な血で染まっていたから、神田は眉をひそめた。
「何だ、お前」
「ども、はじめまして。です」
「名前なんか聞いてねぇよ」
「そうだね。あなたそれどころじゃない感じだし。とりあえず意識がハッキリしていてよかった」
と名乗った少女はそう言いながら扉をきちんと開いて廊下に出てきた。
持っていたタオルで血に濡れた両手や頬を拭う。
服についた赤は染み込んで黒くなってしまっていたので、軽くゴシゴシしただけで諦めたようだった。
「ちゃん……」
神田に声をかけてきた女性のうちの一人が、困ったように彼女を呼んだ。
はタオルを畳みながらそちらを見る。
「ご苦労様です」
すぐに状況を察したのか、は微笑んだ。
「医療室の中はあらかた手当てが終わりました。でもまだ怪我人がいるから総合管理班からありったけのタオルと包帯を貰ってきてくれると嬉しいです。それとお湯も」
身を竦ませ、何をすればいいのかわからなくなっている彼女たちに、は的確な指示を出した。
柔らかな口調で頼むように言い、最後にぺこりとする。
「お願いします」
「え、ええ……。でも、この人は」
「私が責任を持って引き受けさせてもらいますね」
「そう……。わかったわ」
女性達は安堵にも似た表情を見せ、急いでその仕事に取り掛かかっていった。
その様子を見ていた神田はますます眉をひそめる。
何だこいつ。
怪訝に思いながらを眺める。
なぜ医療班の人間でもないくせに治療室から出てきて、さらには自分に構うのだろう。
けれど、どうせ素人だ。
加えてこいつは女である。
この傷の具合を見れば悲鳴をあげて怯え出すかもしれない。
面倒くさいことになるのはごめんだったので、神田は無理に立ち上がろうとした。
するとそこではじめての表情が変わった。
驚いたように手を振る。
「ちょ、動かないでよ!すぐに手当てするから」
「いらねぇよ」
「というか、どうしていまだに手当てされずにいたの?明らかにあなたも重傷者じゃない」
確かに廊下に転がっているのは軽症者ばかりである。
神田はすぐさま医療室に運び込まれようとしたのだが、傷ならすぐに塞がると言ってそれを拒んだのだ。
自分は特殊な体からいいものの、普通の人間は早く対処しなければ死んでしまう。
そう思って廊下に残ったのだが、医療班の者でもないのに体を触られるのが嫌で、結局重症を晒したままだったというわけだ。
痛いところを突かれて、神田はを睨みつけた。
けれど効果はなかったらしく、普通に近づいてくる。
おかしい。普通の女なら怖がって足を止めるのに。
「とにかく楽にして。固い床の上でごめんね。医療室がいっぱいなんだ」
「…………………」
「不満なら私の部屋のベッドを貸すけど。怪我人でそこまで歩かせるわけにもいかないからね」
「…………………」
「申し訳ないけれどここで我慢して」
「…………………」
「どうかした?やっぱりベッドがいい?仕方ない、だったら私がお姫様だっこで連れてってあげるよ!」
「できるわけねぇだろ!!」
神田は無言で睨みをきかせていたのだが、あまりに突拍子のないことを言い出したので、思わず怒鳴ってしまった。
けれどは微塵も臆することなく胸を張る。
「決めつけるな!ビリーヴ!私を信じて正解!!」
「信じられるか!女のくせに何言ってやがる!!」
「あ、男女差別。駄目だよ、そーゆーの。今時モテないから」
「違ぇよ、そうじゃなくてその小さくて細い体で俺が担げるとでも思ってんのか!?」
「大丈夫だいじょうぶ。だってお兄さん見た目的に姫属性だから」
「はぁ!?」
「そして私は王子属性。ステキ!」
「意味わかんねぇんだよ、テメェ!!」
神田は痛みも手伝って、手加減なしでを怒鳴りつけた。
そのあまりの大声に周囲にいた人間は身を竦ませる。
ただ一人、だけが平然としていた。
「うん。意識があるだけじゃなくて、元気もいっぱいみたいだね。安心したよ」
彼女はそこで少しだけ真剣さを見せた。
神田は目を見張る。
もしかして今の意味不明な話は、こちらの具合を確かめるためだったのか。
神田は先刻、重症のくせに動こうとした。
あまりに傷が深ければ、本人は激痛のあまり事の重大さに気づかない場合がある。
また内部が破損している可能性もないとは言えない。
他人の目からも見えずに、訴えることも、それを聞くこともなく死んでしまうのが定型パターンだ。
はその確認を取っただけなのかもしれないと気がついて、神田は舌打ちをした。
「何なんだよ、テメェ……」
「だから」
「だから名前なんて聞いてねぇよ」
「それより手当てするからじっとしててね」
そう言っては神田の前にしゃがみ込むと、治療道具を床に置いた。
そして腕を伸ばしてくる。
しなやかな指先が神田に触れた。
その瞬間、神田はの手を振り払った。
バシッ、と乱暴に打った音がやけに響く。
の双眸が驚きと痛みに見開かれた。
神田はその瞳を睨みつけて言う。
「触るな」
神田は冷たく彼女を拒絶すると、壁に手を突き立てて立ち上がった。
やはりまだ傷が痛んだが、無視してやる。
そしてを見下ろした。
「手当てはいらない。テメェの手なんか借りるかよ」
その白い指先で俺に触れるな。
泣くな、怯えるな、悲鳴をあげるな。
目障りだ。
の金の瞳に映った自分がひどく冷ややかな顔をしているのを神田は見た。
これでもう、こいつは傍にはやって来ないだろう。
それでいい。
他人の傷や血など見なくていい。
専門でもない者が、進んでそれを目にするなんて馬鹿げている。
最高に滑稽な話だ。
そう思って踵を返す。
ふらつく体を叱咤して、自室に戻ろうと足を運ぶ。
不覚にも貧血にくらりとよろめいた。
そのときだった。
ものすごい引力を後ろに感じた。
同時に頭皮に激痛が走る。
痛い。冗談抜きで、本当に痛い。
突っ張る髪の感覚で、神田は今の状況を理解した。
つまり頭頂部でまとめたポニーテールを、背後から全力で引っ張られているのだ。
倒れそうになったのを支えてくれたのかと思いたいが、それだけでは絶対に説明がつかない勢いである。
「な……っ、このっ、離せ!!」
神田はあまりの痛みに本気で暴れたが、後ろに立った人物は一向に手を緩めない。
それどころかさらにギリギリと引き絞ってくる。
激痛が容赦なく神田を襲った。
「オイ、離せっつてんだろ!!」
「黙れ、この怪我人が」
妙に低く威厳のある声がそう言った。
決して大きくはないが、意識を捕らえる声音だ。
神田は背中を切りつけられているような錯覚を覚えた。
冷たい視線が刃のような鋭さで突き刺さる。
ちなみにポニーテールはいまだに引っ張られ続けていた。
「重症者だと思って優しく対応してあげたら速攻で付け上がってきたな、このパッツン男め」
「な……っ」
「血まみれ侍よ、邪魔になる程度のプライドなんて発揮してる場合か?それとも落ち武者希望なわけ?」
「お前な……!」
「ねぇ、ちょっと落ち着いて自分の状況を確認してみようよ。あなたは今、フラフラのヨロヨロなんだよ?産まれたての小鹿よりも可哀想な足取りなんだよ?それなのに手当てを断るなんてどういうことなのかな」
「そんなの俺の勝手だろうが!!」
「あっそう!だったら私もせいぜい勝手にさせてもらおうか!!」
は空間によく響く声でそう言い放った。
それは近くにいた者すべての注意を引き寄せる。
ついでには掴んでいる黒髪を引き寄せる。
同時に神田の膝裏にぱかんと蹴りを入れた。
神田はそのまま崩れるように倒れて、流れる動作で床に座ったの膝の上に頭を落とす羽目になった。
見事に膝枕の体勢に持っていかれた神田は、怒りに頭が真っ白になる。
蹴りは衝撃だけで痛みはなかったし、引っ張られているのは怪我とはまったく関係ない頭髪である。
けれど今の状況に腹立ちを覚えるなというのは、神田の性格上、絶対に無理なことだった。
「テメェ!ぶった斬ってやる!!」
「やれるもんならやってみろ、この銃刀法違反者が!!」
普通の人間なら臆するような神田の大音声に、は一歩も引かずにそう返した。
ついでに右手から『六幻』をもぎ取られる。
咄嗟に取り返そうとしたら、掴まれたままだったポニーテールを引っ張られて動きを封じられた。
「っ……」
「大人しくしてろ、大怪我人。さもないと今度はその傷口に正義の鉄拳を叩き込む」
「テメェ……!」
「それともその浮いた頭に重しとしてあなたの愛刀を素敵に刺してあげようか?」
「………………」
「安心してよ、私は体術も剣術も得意なの。相手を再起不能にするなんてお手の物だよ」
見上げた先で、はにっこりと笑った。
金の瞳に光が踊る。
ようやく神田は厄介すぎる相手に捕まったことを認めた。
必死に普通の女だと思おうとしてきたが、こいつはおかしい、おかしずぎる。
完璧なまでの変人だ。
しかしそこでの眼差しがゆるんだ。
神田を捕まえている手が、わずかに優しくなる。
「やり場のない想いをぶつけちゃってごめんなさい」
「……そう思うなら髪から手を離せ」
「あはは、悪気はあったんだよ全然!!」
「あったのかよ!!」
「当たり前じゃない。じゃなきゃ重傷の人間にこんなことできるもんか」
そう言われて神田は少し黙った。
は続ける。
「でも大怪我だって自覚しておいて、手当てを断るなんて変だと思う。自分勝手で悪いけれど私は許せないよ。目の前で痛い姿を晒されるなんて我慢できないんだ」
神田はを睨みつけて、鼻で笑った。
「とんだ偽善だな。傷ついた人間を放っておけないってか?」
皮肉の笑みを浮かべて、冷たくそう言ってやる。
けれどは思いがけない反応を返した。
「うわー新鮮!そんなこと初めて言われた!」
「……………………」
嬉しそうに言うことか。
神田は思ったが、何だか驚きに声が出ない。
は笑った。
「偽善ぶれたらいいんだけどね。残念ながら私はそんなできた人間じゃないんだよ」
「……じゃあ、何だよ」
「私が痛いから」
「………………………………はぁ?」
意味不明なことを言われて神田は変な声を出した。
は腕を伸ばして床の上に置いてあった治療道具を引き寄せる。
蓋を開けながら続ける。
「よくあることだよ。怪談を聞くと怖くなるのと一緒」
「……意味がわかんねぇよ」
「冬にタンクトップ一枚のお兄さんを見ると、防寒服を着ていてもこっちまで寒くなる。夏に毛皮のコートを着込んでいるお姉さんを見ると、パンツ一枚だったとしても暑くて死にそうになる。そんな感じ」
「…………つまり、怪我をしている奴を見ると、自分まで痛くなる?」
「そ。なんか体がぞわぞわするんだよね。条件反射というか」
「…………………………」
「自分の痛みでも手一杯なのに、そんな落ち着かない気分にさせんな!っていう八つ当たりです。大人しく制裁……、じゃなかった、手当てを受けちゃってください」
「制裁?制裁っつたよな、今」
「大丈夫。エジプト人もびっくりな包帯さばきでミイラ男みたいにしてあげるから!」
それを聞いて神田は何か怒鳴ってやろうと思ったが、それより口を突いて出てきた言葉があった。
「お前……」
「ん?」
「……変な奴」
「よく言われるー」
はあははと笑って、ズタズタに切り裂かれた神田のコートに手をかけた。
微かに走った痛みに神田は目を閉じる。
そうすると頭の下にあるの膝の温もりだけが鮮明だった。
「それに、人間は脆いから」
また少しだけ声音が変わったけれど、神田は目を開かなかった。
何だかそうしなければいけない気がした。
今のの表情を見てはいけない、そんな気がしたのだ。
「ホント、あっけなく死んじゃうだよね。どれだけ自分の中で最強で、世界の中心だった人でも、簡単に……」
そこでの言葉は止めた。
何だかそんなことを口走ってしまった己自身を、咎めているような雰囲気が伝わってくる。
神田はあえて何も言わなかった。
するとぽんぽんと肩を叩かれた。
神田が目を開くと、がにやりとした。
「だから意地張らないで。ここまでがんばったんだから、しんどいのはもうお終い」
「……………………」
「お疲れさま。それと、お帰りなさい」
そこでが予想外に優しい顔をしたので、神田はわずかに目を見張った。
その隙には神田のコートを引き剥がしにかかる。
けれど膝枕の体勢ではどうにもやりにくそうなので、神田は身を起こした。
するとが慌てたようにポニーテールを掴んでくる。
「ちょ……、待って!」
「うるせぇ、いつまでもテメェの膝なんか借りてられるか」
神田は冷たくそう言って、の手を振り払った。
くるりと振り返って彼女と向き合う。
廊下に腰を落ち着けて、神田は舌打ちをした。
「……この傷じゃテメェから逃げられねぇ」
「え?」
「だから早く気がすむようにしろ。終わったらすぐに消えろよ」
言いながら神田は手早く上着を脱ぎ始めた。
は事を了解して小さな銀色の盆と、脱脂綿、消毒液などを取り出してくる。
ばさりとコートを投げ捨てると、神田の胸の傷があらわになった。
生々しいその痕跡には微かに眉を寄せる。
「お兄さん、我慢強いね。予想外にひどい傷なんだけど」
「見るのが嫌ならやめろ。そうじゃないのなら黙ってろ」
そう言ってやるとはちらりと神田を見上げて、微笑んだ。
「…………意外にいい人?」
小さなその独り言を無視して神田はを見やった。
医療道具を扱う手つきが素早い。
本当に何なんだこいつ。
「お前、知識があるんだな」
「え?ああ、処置の?」
神田は頷いて続きを促す。
それを何となく感じたからこそ手当てを許す気にもなったのだが、こんな小娘に何故と思ったのだ。
は手を止めずに答えた。
「まぁそれなりに。先生……師匠がやたらめったら詳しかったから、いろいろと叩き込まれてる。あと、不本意ながら医療室の常連なので、処置の仕方は身を持って経験済み」
「師匠……?医療班の常連……?」
「今日もそんな感じで医療室にいたらこんな騒ぎになっちゃったからさ。簡単なことを手伝ってたんだ」
「ということは、お前エクソシストか?」
神田が少し驚いたようにそう言ったので、は首を傾けた。
胸の傷を消毒しながら口を開く。
「見ればわかるでしょ……って、ああ」
そこでは自分の着ている服を見下ろして、納得した顔をした。
血が飛び散って黒くなってしまっているそれは、団服ではなかったのだ。
「上着に血がついちゃったから脱いだんだった。あんまり意味なかったけど。あなたの言う通り、私はエクソシストだよ」
こんな子供が、と神田は思った。
自分だってそう歳がかわるわけではないのに、不機嫌な表情になるのを止められない。
そして面倒だと結論付けた。
今後、この娘とは同じ任務に派遣されたくないものだ。
妙な仲間意識を持っているかもしれないし、それで泣き出されたら本当に面倒だ。
弱くて、脆く、特に女は悲劇に酔うことを好むという。
目障りなことこのうえない。
「あなたもエクソシストだよね。名前は?」
胸の傷に包帯を巻きながらが訊いてきた。
神田は関わりを持ちたくなかったので黙ったままでいた。
するとが不思議そうに見上げてくる。
「ね、名前は?」
「………………………」
「おーい」
「………………………」
「答えたくないなら別にいいけど」
「………………………」
「でも声かけるときに困るから、とりあえず“スーパー★辻斬り男”とでも呼ばせてもらうね」
「ちょっと待て!!」
無視をきめこんでいたはずの神田はそこで思わず声を出してしまった。
けれどは普通に手当てを続けている。
「ちなみに煽り文句は“まだこの世に生息していた!?黒の教団プレゼンツ、脅威の時代遅れデンジャラスボーイ!!”で」
「長い!そしてダサい!!」
「手にしたイノセンスでどんなものでもメッタ斬り!泣く子も大爆笑な爽やかさで、晩ごはんの支度を手伝います!!」
「晩ごはん……!?斬るのは人間じゃなくて食材なのかよ!!」
「下ごしらえは俺に任せて飯を炊けぇ!みじん切りが得意技で、かつら剥きだって出来ちゃうゾ★『すみません奥さん、それでもコンニャクだけは斬れないんです……っ』」
「セリフ入った!!」
「キメの言葉はもちろん『フ……ッ、またつまらん食材を斬ってしまった』。…………駄目だよそんなこと言っちゃ。農林水産省の皆さんに半殺しにされるよ?」
「俺は今お前を半殺しにしたい!いや、その程度で許すか!!」
神田はそう怒鳴ってに掴みかかろうとしたが、ぐいっと包帯を引かれて動きを止められた。
悔し気に顔を歪ませる神田には微笑んでみせる。
「ハイハイ手当てはまだ終わってませんよー。安静にしてましょうね“スーパー★辻斬り男”ちゃん」
「…………っ、その呼び方はやめろ!!」
「ああごめん、煽り文句からのほうがよかったんだね。じゃあ最初から。“まだこの世に生息して……”」
「やめろ!今すぐやめろ!!」
「何だよ、もー。じゃあなんて呼んでほしいの?」
「神田だ!!」
不満そうな顔をするに、神田は怒鳴り声のまま告げた。
瞬きをする瞳を睨みつけて低く言う。
「今度その名前以外で呼んでみろ、命はないからな」
はしばらく目を見張って神田を眺めていた。
それから視線を落として手当てに戻る。
胸の傷に包帯を巻き終えて、その他の裂傷に消毒液を染み込ませたガーゼを押し当てる。
「……かんだ」
何だか口の中で確かめるようにが言った。
それから口元をゆるめた。
「東洋人なのは見てわかったけど。その名前は日本人、だよね」
「だったらどうした」
「珍しいなぁと思って。神田、ね」
は言いながら小さく笑ったから、神田は眉をひそめた。
その様子が何だか嬉しそうだったからだ。
「何だよ」
「ん?ううん、別に。ただ、あなた私の知っている人に少し似ているから」
「日本人に知り合いでもいるのか」
「違うよ。そうじゃなくて、雰囲気というか。何となく」
そこでわずかにの瞳に言葉にならないような感情が滲んだから、神田は口を閉じた。
そして苛立ちを覚えた。
何だろう、この娘の表情がやけに目につく。
それは馬鹿なことを言っているときと、そうでないときの差だろうか。
言動はいちいち突拍子がないし、一般論からはずれまくっているから調子が狂う。
その薄紅の唇から吐き出される言葉も、声も、耳に残って何だか腹立たしかった。
癇に障る、神田の嫌いなタイプだ。
手当てが終わればコイツも気がすむだろう。
それまでの我慢だと考えて、神田は視線をの向こうに投げた。
すると彼女の背後にある医療室の扉が開かれた。
姿を現したのは長身痩躯の、白衣を着た男性だった。
治療で乱れた茶色い猫っ毛を整えながら、廊下にを見つけて声をかける。
「君……、何やってるの?」
気だるげなその調子に、神田まで何だか気が抜ける思いがした。
この男性は医療班班長という地位に就きながら、どうにもやる気が感じられないのだ。
まぁ技術に不足はないから、問題はないのだが。
は神田の腕に包帯を巻きながら、後ろを振り返った。
「ラスティ班長。見てわかりませんか?手当てですよ」
「……それはわかるんだけどさぁ」
医療班班長ラスティ・デフォンは眠たげに目を瞬かせて、珍しそうに神田を見た。
「よく医療班でもない者に傷を触らせたね。神田君、その子にどうやって脅されたの?」
「何て人聞きの悪い!まだ脅してなんていませんよ!」
「こっちが動けないのをいいことに、さんざん脅しただろうが!それにまだって何だ!!」
神田は思わず怒鳴ったが、に包帯を引っ張られて強制的に黙らされる。
彼女はラスティに立てた親指を突き出した。
「患者が何かよくわからないことを口走ってますが、それは全て怪我のせいです。大丈夫ですよ、ラスティ班長。実害はありません!」
「……っ、テメェが決めるな!!」
神田が引き絞られる包帯から逃れようとしつつ言うと、がこちらに視線を戻してきた。
そして小首をかしげて微笑む。
「だって私、いざとなったら死なない程度に殴って気絶させるか、痺れ薬でも盛ってでも手当てしてやろうと思ってたんだもの。それに比べたら、ね?」
「…………………………」
とっても明るい笑顔でそう告げられて、神田は一瞬本気で言葉を失くした。
何だと、この女。
とういうことは、自分が今まで受けてきたとんでもない仕打ちは、コイツにしてみれば随分控えめだったということか。
その事実が信じられなくて固まっていると、の後ろからラスティがしみじみとした調子で言った。
「神田君。その子、そういう子だから。冗談も手加減もなしに、そういう子だから。気をつけてね」
「どう気をつけろと……?つーかラスティ!危険だってわかってんなら、こいつに手当てを手伝わせるな!!」
「だって人手が足りなかったしぃ」
ラスティは反省する素振りもなく肩をすくめてみせた。
それからふと気付いたように神田を見つめて、顎に手を当てる。
「君。神田君の手当てをしたはいいけど、その姿で帰られるとちょっとマズイかも」
「え?ああ……」
そう指摘されては頷きつつ、巻き終わった包帯をぽんとした。
どうやら手当てが完了したらしい。
包帯の具合は、悔しいながら随分と良い。
神田は一応に礼を言おうと思ったが、それより先に二人の会話に眉を寄せた。
「……何の話だ」
「血まみれ」
「は……?」
に一言で済まされて神田はますます眉を寄せる。
するとラスティが説明してくれた。
「鏡を見ておいで。君の髪やら服やら全部血まみれなんだよ。そんな姿で教団内を歩きまわられたくないなぁ」
「血に弱い子が見たら気絶しちゃうよ」
「…………そんなの俺の知ったことか」
何を言い出すかと思ったら、そんなことか。
神田は半ば呆れて立ち上がろうとした。
もう手当ては終わったのだし、ここに用はない。
とっとと自室に戻って着替えるだけだ。
けれどに手を取られて引き止められた。
「駄目だって。それじゃあ本当に辻斬り男みたいだよ」
「お前な……!」
「それに今はこんな状況で、みんな混乱してるからさ。お願い、協力してくれないかな」
「…………………」
「とゆーわけで、ここはひとつカリスマ美容師並みの私にすべて任せてみようか!」
「…………………言いたいことはわかったが、テメェに任せるのだけはごめんだ!!」
神田はそう怒鳴って、掴んでくるの手を振り払った。
しかし彼女はすでに、どこから取り出したのかハサミやらブラシやらを意味不明なポーズで構えていた。
やる気満々である。
「ハーイ、お客様!まずは洗髪いっときましょうか!」
「いらねぇっつてんだろ!……っ、おい!テメ、なに勝手に髪ほどいてんだよ!!」
「うわぁ、血がついてるところはさすがにゴワゴワしてるけど、それ以外はなんてキューティクルなんだ!!」
「い……っ、痛ぇんだよバカ、引っ張んな!!」
「世界が嫉妬する髪か!東洋の生んだ奇跡か!このアジアンビューティめー!!」
「この……っ、離せ!触るな!近づくな!消えろー!!」
猛然と暴れる神田に組み付いて、はその髪をわしわしと掻き回した。
血が固まっている部分をほぐし、指先で梳く。
激しくじゃれ合うその光景はどこか野良猫のケンカに似ており、二人の背後でラスティは思わず微笑んだ。
それからふと廊下の先に目をやり、口を開く。
「君、ナイスタイミングみたい。お湯が来たよ」
神田を床の上に倒した体勢でが振り返ると、そこには総合管理班から備品を取ってくるように頼んだ女性達の姿があった。
そのうちのひとりがお湯の入った水差しと大きな容器を抱えているのを発見して、目を輝かせる。
「本当にナイスタイミングですね、これで血がふき取れる!どうもありがとう、お湯くださーい!」
は身を起こすと、女性達のところまで身軽に近づいていった。
その途端、神田は跳ねるように立ち上がる。
そしてに背を向けると、わき目も振らずに駆け出した。
「神田くーん。どこ行くのー?」
気だるげなラスティの声が追いかけてくる。
神田は振り返らずに怒鳴った。
「これ以上その変人に付き合いきれるか!俺は帰る!!」
「無駄な抵抗を……」
ラスティが小さく呟いたが、神田は逃げおおせる自信があった。
すでにかなり回復しており、あんな小娘ひとりどうとでもかわせる。
そう考えながら足を速める。
「待てー!!」
背後でが叫んでいる。
追いかけてくる気配がする。
けれど神田を捕まえることは出来ないだろう。
もとより歩幅の違いがあるし、彼女はお湯を張った容器を抱えているのだ。
絶対に追いつけはしない。
そのはずなのに、神田は首筋が粟立つのを感じた。
それは確かな予兆だった。
「待てってばー!かんだー!!」
「そんなに慌てると転ぶよ、君」
「え、あ、うわぁ!!」
後ろから悲鳴が響いてきた。
神田は思わず足を止めて振り返った。
そしてが廊下に置いてあった治療道具に蹴躓いて、豪快にすっ転ぶのを見た。
けれどその光景には、何かが足りない。
何か……。
ハッとして神田は瞳をあげた。
視界に映ったのは照明に輝く銀色の容器と、そこから飛び出した湯気をたてる透明な液体。
次の瞬間。
バシャァア!!
「…………………………」
神田はこれ以上ないくらい盛大に湯を浴びていた。
続いて落ちてきた容器が、カポリと頭にかぶさる。
転んだの手から離れたそれらは、狙ったかのような正確さで見事に神田を捕らえたのだ。
全身ずぶ濡れになった神田は、少しの間そこに立ち尽くしていた。
それから震える手で頭にかぶさった銀色の容器を取る。
視線を投げた先では、床に転んだ体勢のままのが呆然とこちらを見ていた。
「テメェ……!」
迸るような殺気を込めて神田が呻くと、はびくりとその場に跳ね起きた。
あわあわと手を動かし、引きつる口元でなんとか微笑む。
そして言った。
「わぁ神田ってば、お湯もしたたるいい男!!」
「それがテメェの遺言だな……!」
神田は右手に持った『六幻』を発動した。
我慢の限界とはこういう心境のことを言うのだろう。
神田はその感情を胸に、何の躊躇いもなく、一切の容赦もなく、へと斬りかかっていった。
「今度こそぶった斬ってやる、このバカ女ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ぎゃー!ごめんなさーい!!」
それから数時間後、めちゃくちゃに破壊された廊下では正座をさせられていた。
黒髪の青年は始終怒っていて、責任を取るように強く要求した。
金髪の少女はそれを聞いて、半泣きから笑顔になった。
そして神田の髪を綺麗に梳き、結い上げ、濡れてしまった包帯をかえることに、強引かつ懸命に勤しんだのだった。
ヒロインとの思い出話のラスト、神田編『泡沫の祈り』です。
一応『ほうまつ』ではなく、『うたかた』と読みます。(どうでもいい!)
神田はずっと仏頂面ですね。どうにかして笑かしてやりたい。
ところで前回予告するのを忘れていたんですが、オリキャラがひとり出ています。
医療班班長のラスティ・デフォンです。(バレンタイン夢にちらりと出演しましたが)
彼は活力はないけれど才能はある、嫌味な20代のお兄さんです。(笑)
これからもちょくちょく出せればいいな、と思っております。
次回は神田がアレンに喧嘩を売ります。そろそろ殺伐としてきますよ!
血の表現がありますので、ご注意を〜。
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