どれだけ揺すぶってみても鏡の国から抜け出せない。
早く起きて、“私”を夢想する王よ。

あぁ、でも
本当に夢を見たのは ど っ ち ?






● 恋船旅路  EPISODE 4 ●







悲鳴をあげてたまるかと思った。
敵に囲まれた状況ではあまりに不様だし、何よりグローリアの前でそんなことをしたら殺される。
死んでも嫌だと意思は、当然の自己防衛でもあった。
睨みつけた先で光る蒼の双眸。
声を耐えるが気に喰わなかったのか、グローリアがもう一度勢いをつけて腕を蹴りつけてきた。
鋭い踵が関節に喰い込む。激痛に体が跳ねる。


「おい」


苛立ったようなティキの声が聞こえた。
制止を含んだそれをグローリアは無視する。
今度は腹に飛んできた脚を何とか左腕で防いでみせた。


「……お下品ね」


痛みで乱れた息を押さえつけながら、はグローリアに言った。


「下着が丸見えよ、お姉さん」


スリットの入ったロングスカートで脚を振りあげるものだから、のいる位置からは否応なしにそれが目に入る。
攻撃を弾き返してから続けた。


「先生はどれだけ暴れても、絶対に下着を見せたりしなかったんだけどな」
「……………………」
「相変わらず詰めが甘いのね。“変身”するなら完璧に化けてくれる?」


黙して答えない“彼女”をは冷たく一瞥した。


「中途半端なモノマネはやめて。……不愉快よ、ルル=ベル」


最後だけ音程を落として囁けば、グローリア―――――否、彼女に化けたルル=ベルは微笑した。
どうやらの言を聞き入れるつもりはないらしい。
尊大な様子でばさりと銀髪を払いのけた。


「そちらも相変わらずだな。見破るのが早い」
「単純に似てないのよ、あなた」
「それでも少しは騙されてみればいいのに。……この姿は懐かしいだろう?」
「………………………」
「私は、お前のために、お前と会うときは“グローリア・フェンネス”の姿でいると決めているんだよ」
「へぇ、何という嫌がらせ」
「そう、嫌がらせだ」


ルル=ベルはあっさり肯定すると、無造作に手を振り上げて、の左頬を張り飛ばした。
身を引いて直撃は避けたけれど、確実に打撃を与えられる。
腕の痛みが尾を引いて視界を明滅させているのがいけなかった。


「……っつ」


口の中に鉄錆の味が広がって、あぁ嫌だなと思った。
血を垂らしたらドレスを汚してしまう。せっかくラビが着せてくれたのに。


「……主人に無礼を働いたな」


感情を一切排除した声で罵られた。
ルル=ベルだとわかっているのに、グローリアの声帯を通して伝えられるから、反射的に体が震える。
その原因は恐怖ではなく、腹立たしさだった。


「お前、許さない」


再び振り上げられる掌。
痛くはない。本物のグローリアに殴られたらこんなものじゃ済まない。
大体あの人はいつも平手じゃなくて拳骨だった。
本当に詰めが甘いなぁ、と思ってルル=ベルを見上げる。


「許さない……!」


そしてその攻撃の手を迎え撃ってやろうと身を起こしたところで、完璧に視界を塞がれてしまった。


「許さないのは俺もだよ」


わざと茶化すような調子で言われたけれど、その底には冷ややかな感情が通っている。
は目を見張った。
そうして自分の眼前に立つ男の背中を見つめた。
彼がルル=ベルとの間に割って入り、を打つはずだったその手を掴んで止めているのだ。


「何のつもりだ、ティキ」
「別に?」


ルル=ベルの鋭い詰問にもティキは笑って答えるだけ。
ただし同時に彼女の腕をひねり上げる。
無表情を保っていたルル=ベルにわずかな歪みが生じた。


「双子にも言ったんだけどな。お前まで千年公に逆らうなって」
「私は主人のために動いている」
「独りよがりな考えだよ、それは。……今回は止めろ」
「何故」
「そういう約束だからだ」
「私には関係ない」
「ルル」


頑固なルル=ベルにティキは深いため息をついてみせた。
そしてさらに彼女の腕をひねりあげる。
ギリギリと力が反発しあうのが見えるまでそうしてから、ティキは家族をなだめるように微笑んだ。


「まだやるというのなら、千年公におしおきしてもらうぞ」


途端、ルル=ベルの片眉がぴくりとする。
ティキが合図のように視線をやれば、千年伯爵は頷いてみせた。


「それもやぶさかではありませんねぇ」


その傍でロードがふふっと笑った。
双子は何故だか限界まで小さく縮こまってしまっている。
には何が何だかわからなかったけれど、本能的に嫌なものを感じ取って冷や汗を浮かべざるを得ない。
妙に張り詰めた沈黙。
ルル=ベルはティキから逃れると、忌々しそうにを見下ろしてきた。


「……悪運の強いガキだ」


どうやら手を引いてくれるらしい。
はそう悟ってわずかに肩の力を抜く。
今のはまだグローリア先生っぽかったかな、とか考えているうちに、ティキの指先が伸びてきて頬を撫でられた。
引き攣るような痛みが走って目の前が揺れる。
敵に見られたくはないから瞬きで誤魔化した。


「悪いな、お嬢さん」


吐息のように謝られて不思議に思う。
彼は双子からもルル=ベルからも自分を助けてくれた。
どういう風の吹き回しだろうと疑いたくもなるけれど、さすがに二度目となればそれも申し訳ない気がする。


「……今日は随分と親切なのね」


お礼を言うのも変だからそんなことを口走れば、ティキはますます頬に掌を這わせてきた。
痛みが強くなる。


「親切じゃない。誠実なんだ」
「私と言葉の取引をしたいから?」
「それもあるけれど……」


ティキはに顔を近付けると、色を含んだ口調で囁いた。


「……俺はあの少年と張り合いたいだけだよ」
「は……?」


本気で意味がわからなくて変な声を出してしまった。
おかげで反応が遅れる。
はどこからともなく伸びてきた銀筋に、一瞬にして縛り上げられてしまったのだ。


「……っつ、なに……!?」
「……ルールー」


ティキもこれは予想外だったらしく、呆れた調子で犯人の名を呼ぶ。
ルル=ベルは悪びれもなく言った。


「その娘が勝手に立ち去ろうとしていたのは事実だろう」
「まぁ、そうだけど」
「ならば今度こそ主人のためだ。それに危害は加えていない。何か問題が?」
「大アリよ!!」


本人が大声で訴えたけれど、誰も聞いてくれなかった。
腕に胸に腹に食い込む拘束。
ルル=ベルはグローリアの銀髪を三つ編みのように編み込むと、それを伸ばしての身を縛り付けてきたのだ。
一体どうなってるんだ、その髪は。
そう問い詰めてやりたいけれど、千年伯爵の言葉に先を越される。


「ありがとう、ルル。これでまたお嬢さんと話が出来る」
「全ては主人のために」
「おいコラちょっと!そんな綺麗な主従愛を見せ付けてないで!」


解いてくれと要求したけれどやはり全員で無視だ。
敵なのだからそれも当然のことなのだけど、そこでばちりと目が合ったからは思わずティキを見つめてしまった。
……もしかしたら。
本来ならば決して抱かない甘い期待。
もしかしたら、今日限りは、また助けとなってくれる……?
ティキは数回まばたいた後、優しく微笑んでくれた。


「わかったよ、お嬢さん」
「え……」
「まったく、仕方がないな」


彼は笑顔のまま、ぐっと拳を握った。


「今からは、俺がお前の世話を焼いてやるからな!」
「……はぁ?」
「だってそのままじゃケーキも食えないだろ?ほら、あーんして」
「………………………」
「紅茶のお代わりは?あぁ、熱くて飲めないか」
「……………………………………………」
「待ってな、すぐに冷ましてやるから。ふーふー」
「……………………………………………………………」
「よし、これでいいだろう。お嬢さん、口開けてぇえぐぼ!!!」


検討違いの方向に気を遣わせて、妙にはしゃぎ出したティキの声は、最後で意味不明な悲鳴に変わった。
何故なら超接近してきた彼の額に、が渾身の頭突きを決めたからだ。
衝撃でシルクハットが飛んでいって床の上に落ちる。
ぱさり、という音が何だか間抜けに聞こえた。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っつ、何すんだよ、お嬢さん!」
「うるさい黙れ今すぐ私を解放しろ」


涙目で叫ぶティキには低く告げた。
その表情は殺人的に冷たい。据わった目で睨みつける。


「無駄にウキウキするあんたを見て私の我慢は一気に限界点を突破しました。よってもう付き合いきれない」
「な……っ、何だよ!縛られて不満そうだったからやってやったのに!!」
「頼んでない。私がして欲しいのはこの縄を解くことだけ!」
「おいおい、本当につれないな。それ以外なら全部この俺が」
「け・っ・こ・う、です!」
「それこそ、今後は着替えや風呂の手伝いも、手取り足取りしてやぅげがはっ!!!!!」


またもや弾んだ調子のティキの言葉が絶叫に変わる。
現状について本当に我慢の限界だったが、半ば八つ当たり気味に椅子を蹴りつけて彼をそこから落としてしまったのだ。


「ちょっとノアさん?家族の中から犯罪者を出したくなかったら、彼とは早々に縁を切ることをお勧めしますよ!」
「うーん。でもぉ、ティッキーが変態なのは前からって言うか」
「死んでも治んねぇだろ」
「ヒッ、何回転生してもね」
「主人の悩みの種だ」
「まぁ、彼は“快楽”のノアですからねぇ……」


が本気で絶縁を勧めれば、ノア達も本気で悩み始めてしまった。
家族に裏切られたティキは床から這い上がってきてテーブルにすがり付く。


「お前ら、少しは俺を庇えよ!」
「「「ヤダ」」」


ノアの子供達は即座に声を揃え、


「日頃の行いを見た限りでは、擁護できません」
「主人に同じく」


千年伯爵は神妙に言い、ルル=ベルは大きく頷いた。
そこでちょっと可哀想になって、はティキに悲哀の視線を送る。


「家族からまったく信用されてないだなんて……哀れなティキぽん」
「同情された!!」


相当なショックだったらしく、彼は顔を覆って嘆き始めた。
ちょっと鬱陶しい。
それは誰もが同じだったようで、ノアの子供達は席を立つとこちらに近づいてきた。


「ティッキー、マジ泣きぃ?」
「うっぜぇなぁ」
「本当にね、ヒヒッ」


ロードはの膝に肘をついてティキを覗き込み、ジャスデビは揃って椅子の片側にもたれかかる。
それを見てルル=ベルまで接近してきた。
の縛る銀色はもう彼女の身からは切断されていて、また伸ばしてみせた長い髪をなびかせながら言う。


「あまりネームレスの傍に寄っては」
「はぁ?今のこいつは何もできねぇだろ」
「そうだよ。縛り上げたのはルルじゃないか」


軽率だと諌める言は双子に笑い飛ばされる。
そのまま彼らは二挺の拳銃を金髪に押し付けてきた。


「皆、離れた方がいい」


それでも苦言を呈したルル=ベルが、の座る椅子の反対側に立った。
その時だった。




「だから!何で神田までついて来るんですか!!」




食堂室の扉の向こうから、やけに騒々しい声が響いてくる。
はびくりと瞠目した。


「うるせぇな、そんなの俺の勝手だろ」


険を含む言葉も、それに返される怒声も、聞き覚えがありすぎる。


「まぁまぁ、三人で仲良く行こうぜ」
「無理です」
「無理だな」
「……オマエら何なんさ。息ピッタリじゃん!実は仲イイとかそんなオチ!?」


険悪な二人を宥めようとして返り討ちにあう、そのヘタレな口調さえよく知っていた。
顔に被せていた指の間からティキがちらりと見てくる。
おかげでは自分が顔色を失っていることを知った。
彼の唇が綺麗な弧を描いたからだ。
それは、嘲笑。


「まったく……。が戻ってくるのが遅いから、神田なんかと並んで歩く羽目になったんです。見つけたらただじゃおきませんよ」
「それは同感だな。どこぞのモヤシじゃあるまいし、あのバカ女……どこで迷ってやがる」
「アレンもユウも、素直に心配だって言えよ……」
「何か言いましたか」
「何か言ったか」
「……何でもないデス」


絶対零度の反応に恐れをなしたのか、ひとつの足音だけが急接近してきた。


「ったくケンカばっかりでさー。オレの身がもたないっての」


ぶちぶちと文句をこぼしながら、その人物は大きく食堂室の扉を開いた。


「いいから、二人とも!早いとこを探し出して帰ろうぜー」


そこで翡翠の隻眼と思い切り視線が合ったものだから、はどんな表情をするべきか真剣に迷った。
とりあえず笑おうかな。
けれどそんな暇もなく、硬直した彼の後ろから文句が飛んでくる。


「ちょっと、ラビ。急に立ち止まらないでください」
「……?おい、どうした。何が……」


そして、


「「「「…………………………」」」」


を含むエクソシスト四人は完全に沈黙した。
アレンも神田もラビも目を見張ってこちらを凝視しているものだから、としては死ぬほど居た堪れない。
気まずい空気に殺されそうだ。


とりあえずは自分の状況を冷静に見直してみた。
縛り上げられた格好で椅子に座っていて、両脇にはジャスデビとルル=ベルが立っている。
膝の上には頬杖をついたロード。
隣の席にはティキがいる。
そして、向かいには優雅に紅茶を飲む千年伯爵だ。
…………うん、どう見てもダメな感じだよね私。


三人が我に返る前に土下座しておいた方がいい気がする。
鬱々とそんなことを思っているの眼前で、非常にゆっくりと食堂室の扉が閉じられた。
数秒の後、廊下から呻くような神田の声が聞こえてくる。


「……おい、何で閉めた」
「……いや、だって!意味わかんねぇもん!!」
「ふざけんなよテメェ!!」
「なんか見ちゃいけないものが見えたさ!きっとアレは白昼夢的な何かで……っ」


必死に現実から目を逸らそうとするラビの言葉は、そこで見事に掻き消された。
激しい音を鳴らして再度扉は開かれる。
それも手だけではなく足も使って開けられたようで、ちょっと有り得ないくらいの騒音が響き渡った。


あぁ、やっぱり土下座くらいじゃ済まないかも。


扉を叩き壊すかのような乱暴さで開け放ったアレンの眼光が、真っ直ぐにへと突き刺さってくる。
だから思った。
絶望的だ。


敵に囲まれた状況で、は味方相手に命の心配をした。




















「おい」


気がつくとそう言っていた。
口から飛び出した乱暴な言葉に、ノア達どころか神田やラビまで驚いている。
だけどそんなこと知ったことか。
アレンはを見据えて言い放った。


「そこの馬鹿。何やってる」


今大事なことは、それを問いただすことだけだ。
だって右腕に打撲の跡がある。
左頬は腫れ、口の端にはわずかながらも血が滲んでいた。
そして何より、拘束された状態でノア達に包囲されているのがいただけない。


「SMごっこに無理やり付き合わされているだけよ」


肩をすくめて返したに、アレンはますます苛立った。


「……冗談を言っている場合か」
「そうよね、私はどう考えたってMよりSだものね。縛られるのなんて何かの冗談でしかない」
「何だ、お嬢さんはもっとマニアックな縛り方が良かったのか?」


軽口を挟んできたのはティキだ。
彼は傍に立っていた銀髪長身の女性に微笑を投げた。


「本人の希望だ。縛り直してもいい?」


呆れたように首を振る彼女を見て、後ろのラビが呆然と呟いた。


「グローリア……?」
「先生の方が美人よ」


即座にが言う。
遮るような調子だったから、ラビは自分の失言を悟ったらしい。
神田が舌打ちをして“グローリア”を睨みつけた。


「“色”のノアか」


だから、そんなことはどうでもいい。
アレンは初めて見る“グローリア・フェンネス”の美貌よりも、に眼を奪われ続けていた。
扉にかけたままだった手をきつく握り締める。


「何をやっている、と訊いているんだ。答えろ」
「お茶会ですヨ」


返答はやはりまともではなく、それを口にした人物と同じくらいに滑稽だった。
アレンはようやくから双眸を移して彼を見る。
パンパンに膨らんだ体を揺すりながら千年伯爵は笑っていた。
尖った耳と裂けた口。
空洞のような眼と共にその顔がこちらに向けられたとき、何故だかが驚いたような素振りを見せていたけれど、アレンにはその理由がわからなかった。


「こんにちは、伯爵」


いつも通りの、道化のようなその姿に、燃える視線を注ぐ。


「随分と素敵なお茶会ですね。……客人を縛り上げて暴力を振るうとは」
「今回、我輩には名無しの女を傷つけるつもりはありませんでした。……と言っても信じてはくれないでしょうネ」
「当たり前です」
「彼女が帰ってしまいそうだったので、引き止めただけですよ。多少強引ではありましたガ」
「多少……ね」


わざとゆっくり繰り返せばロードが笑った。
会うたびに敵かと疑うくらいにくっついてくる彼女だけれど、今回ばかりはそういうわけにもいかないらしい。
アレンにも今の自分には近づきがたいであろう自覚があった。
ロードは代わりのようににぎゅっと抱きつく。


「アレン、怖ぁい」


クスクス笑いの合間にそう言って、完全にの膝を占領してみせた。


「ネームレスを傷つけられたことが、そんなに腹立たしい?」
「……………………」
「だったらお茶会の邪魔しちゃダーメ。でないと……」


こちらを見ているのはもはやロードだけではなくノアの一族全員だった。
紫玉の瞳が微笑んでいる。
その美しい色でもっても嗜虐性は隠し切れない。


「もっと怒らなくちゃいけなくなるよぉ」


白い頸に絡まる褐色の指。
ロードは愛撫のようにゆるゆるとの肌に触れてゆく。


「それとも、ねぇ。可愛い悲鳴が聞きたい?赤い血でお化粧して欲しい?金細工のお人形、バラバラにしてキミ達にあげようか?」


アレンの傍でラビが拳を握り締めたのがわかった。
食いしばった歯の間から何か言おうとして、結局苦しげな吐息に変わる。
神田の漆黒の瞳に宿った光は剣呑さを強めるばかりだ。
クスクス、クスクス。
エクソシスト達の様子を観察しながらロードは微笑みを深めてゆく。
さざめくような哄笑。
それが唐突に止んだ。


「……ネームレス?」


訝しげにロードが呼ぶ。
アレンも心情的には彼女と同じだった。
何故ならが、抱きついてくるロードの頬に、真っ赤に腫れ上がった自分の頬を押し付けたからだ。
それもぎゅーっと、乱暴ではない程度ある。
例えるならば小動物同士の頬ずりだ。
戯れるようなその動作を受けて、ロードは目をぱちくりさせた。


「ダメなのはあなたよ、ロード」


は痛みを見せずに微笑んだ。


「女の子の唇はね、そんな物騒な言葉を吐くためにあるんじゃないの」
「……………………」
「ほら、甘いお菓子でも食べて笑っているほうがずっと可愛い」


最後に額をこつんと合わせて身を引く。
そしてうって変わって厳しい声音で言った。


「そんなわけでティキぽん!お姫さまにケーキ!!」
「え……、俺?何で俺?」
「私だって自分であーんってしてあげたいけどね!それこそが私の生きる希望だけどね!!」


そう力説して、「けれど縛られているから仕方ない」とは首を振った。
その切なげな様子に、ティキは呆れるやら何やらで複雑な表情になりながらも、言われたとおりにしてやる。
ケーキを口元に持ってこられたところで、ロードがまた笑い出した。


「ふふっ、馬鹿な子ぉ」
「バカ?って私が?」
「他に誰がいるんだよぉ。……馬鹿な。そういうとこ好きだよ」


ようやく名前で呼んで、ロードはの頬にキスをした。
ついでのように口元に滲んだ血を舐め取ってゆく。
その光景はやけに扇情的で、少女同士だというのにアレンの神経はひどくざわめいた。


「それはどうも」


は苦笑して、首を傾けた。


「女の子に好意を持ってもらえるのは嬉しいよ。でもあなたが好きなのはアレンじゃなかった?」
「アレンとはまた別だよぉ」
「どっちにしろ、そう思う相手を騙してはいけない」


不意に声を真剣なものにして彼女は続けた。


「……何故彼らまで呼び寄せたの?」


はこちらに顔を向けたけれど、言葉を交わそうとするのは敵ばかりで、アレンは腹立ちを隠せない。
それではまるで、自分達に関わるなと言っているようなものだ。
事実そう思っているであろうことは神田にも察せられたようで、彼は目を細めてを見やった。


「おい、どういうことだ」
「……本来ならばこの船に乗せるのは私ひとりでよかったはず。そのほうがずっと簡単だし効率的よ。騙しメガネを使ったのだから、それも可能だったはずでしょう?」


ラビが微かに息を呑む。
咄嗟に眼帯に手をやれば、双子がニヤニヤと笑った。


「オマエら……、オレ達を罠にはめたんか」
「イイエ。そんなつもりはありませン」
「やることやっといてよく言うぜ」
「我輩は公平を期しただけですヨ」


千年伯爵は平然と言葉を返した。


「こちらはこれだけついてきてしまいましたからネ。お嬢さんのお仲間も同じように招待してあげたというわけでス」
「おかげで私は彼らに殺されそうよ」


はうんざりした“振り”をしたけれど、実際に神田は『六幻』に手をかけているし、ラビも無理に怒りを押さえつけている様子だ。
何より彼女が恐れているのは自分だということをアレンは重々承知していた。


「そうやってわかっているくせに……ね」


よくもまぁ、そういう態度で、あんなことが口にできるものだ。


「おい、馬鹿」
「……さっきから言葉遣いが悪いみたいよ、アレン」


ようやく返事をしたかと思えばそんなことを言うものだから、アレンは半眼になって微笑んだ。
壮絶な笑顔でを睨みつける。


「そうだね。けれど、君は僕以上に悪い。頭が壊滅的だ」


そして笑んだ調子のまま吐き捨てた。


「馬鹿。……後で覚悟していろ」


遠くからでもが鳥肌を立てたことは見て取れたので、アレンはとりあえず彼女から現状に意識を戻すことにした。
あれをやりこめるためには、まず目の前の敵を何とかしなければならないからだ。


「さて、伯爵」


アレンは軽く吐息をついた。


「そちらの用事はお茶会でしたっけ?終わったのなら早くそれを返してもらえませんか」
「駄目ですヨ。まだお話がありマス」
「けれど僕達の席はないようですね。……まさかただ黙って見ていろとでも?」
「イイエ」


千年伯爵は否定と共に椅子を回してアレン達の方を向いた。
『六幻』の柄を握る神田の力が強くなる。
今すぐ飛び出していきそうな彼を、ラビがさり気なく手を出して制した。


「テメェ……」


不愉快気な神田に何も言わずに赤毛の頭を振る。
アレンはそれを一切振り返らずに気配で感じていた。
千年伯爵を睨みつけたまま。


「お茶は出しませんが、見学くらいは許してあげるということでス。さぁ、お前たちも聞いていきなさい、“彼女”の話ヲ」


大きく両腕を広げるその仕草は、まさに舞台の上の道化のようだった。


「そしてもう一度考えてごらんなさイ。正しい答えを出してみなさイ。愚かな子供たちヨ」


不意に空洞のようだった眼に光が宿る。
怪しい輝きを放った千年伯爵のそれは何色とも言い切ることは出来ない。


「どうして“彼女”は非難されル?」


“話”とやらは詩の朗読めいた調子で始まった。
加えて内容の唐突さに神田は眉を寄せ、ラビも怪訝に顔をしかめる。
どうにも意味がわからない。


「教団に身柄を押さえられ、動向を監視されている理由とハ?」
「くだらねぇな。そんなことテメェと議論して何になる」
「そもそも今更の話だろ。……何が言いたいんさ?」
「いい加減気づきませんカ?“彼女”を信じるあまり見失っているものに」


問いかけと同時に視線が合ったから、アレンは千年伯爵と見つめ合った。
眼差しで訴えかけられるものは同意。
彼は自分に肯定を欲しているようだった。


「お前たちは名無しの女が不遇であると思っているのでショウ?名前を消され、存在を認められず、自由と権利を剥奪された哀れな少女だト」
「可哀想かどうかは私が決める。勝手に同情しないで」


本人が言ったけれど、千年伯爵は無視して続けた。


「それは、そうされるだけの“事情”を彼女が抱えているカラ。隠蔽された過去に原因があるからこそ、現在という哀しい結果がある……」


そこで道化はにぃっと微笑んだ。
おどけたような表情。ひどく歪んでいて狂気を孕んでいる。
それは人々を楽しませるピエロではなく、悪夢となって苦痛を与える化け物だ。


「本 当 に ?」


千年伯爵は身を震わせて笑い出した。
広げていた腕を片方翻してを指差す。
そして糾弾するように叫んだ。


「お前はアリス!理不尽の国に堕ちた迷い子!お前は誰にも理解されず、誰をも理解することが出来ない!それは何故カ?“アリス”とは狂った規則ゆめから逸脱した唯一の現実なのだかラ!!」


哄笑を叩きつけられたが目を見張った。
衝撃に応えるように体を強張らせる。
微かに持ち上げられた肩にロードが顎を乗せて微笑んだ。


「黒に捕らわれた白!集団によって少女は嬲り殺される!奴らは自らを全知とし、“アリス”を無知と決め付けた!少しでも何かしてごらん?法廷に立たされたまま、たちまち想定外の罰を下されル!!」


の唇が何か言おうと動いたようにアレンには見えた。
けれど言葉が出ない。
気が狂ったように起こる笑い声に全てが邪魔され奪われてゆく。


「“アリス”!あぁ、“アリス”!!」


千年伯爵はテーブルの上に身を乗り出してと顔を付き合わせた。
その急激な接近はびっくり箱から飛び出してきたピエロみたいだ。
咄嗟に身を引いたの頬を両手で捉えて、千年伯爵は愛おしそうに眼を細めてみせた。


「さぁ、教えてあげまショウ。お前の犯している間違いを」
「………………………」
「それは裁判で裁こうとしているのが罪ではなく、“無罪”であるということに気づかない点ですヨ」
「……無罪?私が?」
「その決定を下したのは奴ら自身デス」


反論しようとしただったけれど、やはり千年伯爵に封じられる。


「“アリス”は無垢であるからこそ告発される。あぁ、奴らが叫んでいる……法に染まれ!罰に汚れろ!そうすれば有罪性を根拠にして、この世界での“自己”を与えてやるとネ」
「私はもう手に入れている」
「名無しのくせに?」


道化は少女を嘲笑った。


「お前は何者にもなる前の存在。完全なるイノセント。奴らはそれを恐れているのですヨ!」


が首を振った。
それは千年伯爵の哄笑から耳を塞ぎたいのか、拘束から逃れたいのか、襲い掛かってくる言葉を否定したいのか。
喉から絞り出すように言う。


「私は“”よ」


その応えが相変わらずアレンを傷つけた。


「名無しの森ならもう抜けた。私は無垢なんかじゃない」
「それは“アリス”を“女の子”と呼ぶようなものでス。お前は“”でいる限り罪を償うよう強いられる。それは本来の罪ではなく、名無しでいることへの罪」
「そうしろと言ったのは教団あちらなのに?」
「フフッ、奴らもきっと、ここまでお前が自己を抹殺し続けられるとは思ってなかったのでショウ」
「……見くびられたものね」
「イイエ、お前が愚かなまでに純粋で、恐ろしく自虐的なだけデス。……他の誰もが真似できないほどニ」


千年伯爵はの顎に指をかけて、伏せられた瞳を無理にあげさせた。
金色の眼が光る。
視線が強くなって道化を射抜く。
それは千年伯爵の問いかけのせいで。


「それでもお前は、心の底で怯えているでしょう?いつ正体を知られて“小鹿”に裏切られるのかとネ」
「……っつ」


千年伯爵はに睥睨されて、また声をあげて笑い出した。


「無垢には言葉や理論が一切通用しない!知識が無知に恐怖するように、世界はお前に怯えている!黒の教団は法廷デス。そこで名前を失ったままで生きるお前に、ハートの女王は激怒している!!」
「首をお切り!!」


呼応するようにロードが叫んだ。
こちらも甲高い笑声を響かせて、の白い喉に掴みかかる。
力は強くないようだったけれど細い息しか吐けないように締め上げた。


「キミの罪はキミのもので、“”には科せられない。そう決めたのは彼らであり、キミ自身でしょぉ」
「……………………」
「本来の名と共に存在を失った。“”は無罪。それこそが罪。罪人のくせに償いもせずに生き続ける“名無し”は脅威。そして狂気。さぁ、そのいかれた頭をちょん切っておしまい!」
「首をお切り!」
「首をお切り!」


ロードの指先がの肌に食い込んだのを見て、双子までもがケラケラと笑い出した。
そのまま殺してしまえとハートの女王の言葉を借りて訴える。
千年伯爵がアレン達の方を返り見た。


「もうわかったでショウ。お前たちは勘違いをしている。“”の罪は“過去”にはない。自我を失ったままで生きようとする、“現在いま”こそが罪なのでス」


不気味に光る双眸を見開いて告げた。


「だからこそ偽の使途たちは“”を非難すル!!」


アレンも瞠目していたから真っ直ぐに視線が突き刺さって痛い。
アリス、あぁアリス!
君はいつまで無垢でいるつもりだい?
不思議の国の狂った住人が問いかけている。
夢見がちな少女はいつまでも子供のままでいようとする。
兎の穴は原始の象徴。母の胎内へと還ってゆく。それは生の否定であり、死への憧れ。


「延々と無罪の罪を犯し続ける彼女の処刑を望んでいル!!」


罪状はデタラメ、それでもハートの女王が叫ぶ“首をお切り!”
空想ばかりしている頭を切り離しておしまい!
頭部と胴体を別々に。望むのは感情と理性の分離だ。
そうしなければ、この世界で“自我”は獲得できない。
だからこそ歪められた規則の中で彼女はこう言うしかないのだ。
『あんた達なんてただのトランプじゃない!』
自己の消滅を回避するために、夢を否定して現実を認めるしかないのだ。


「監視され、裁かれてゆく“”。犯す前の罪を罰せられる“アリス”。理不尽の国から逃れる方法はふたつダケ」


千年伯爵はに視線を戻すと、いっそ優しく微笑んだ。
幼子をあやすように、慈しむかのように。
それを見ては苦しげな吐息を漏らした。


「狂った法に絶対服従するか」


まるで、帰り道を失って途方にくれているアリスのような顔で。


「自分が法に成り代わるか」


ぎりっ、と奥歯を強く噛み締める音がした。


「つまり、教団にその命を差し出すか。名を奪い返して逃げ出すか。ふたつにひとつデス」


沈黙。
静粛に!と叫ばなくても法廷は静まり返っている。
ハートの女王は今も処刑を訴え続けているけれど、アリスが肯定も反論もしなければ、永遠に判決は下されないのだ。
それがルール。物語の決まり事。ページを捲らなければ決して先には進まない。
だからが口を開いたとき、その答えを聞く前から、アレンはぞっと背筋を凍らせてしまった。


「私は」


彼女は仲間達の方を見ようとはせずに呟いた。


「わかっている。わかっているのよ……“私”がいつまでも“”でいられないことくらい」
「エエ、その先を考えないようにしているだけですよネ?」
「いいえ、もう決めているわ」


は罪を告白するように吐き出した。


「“その時”が来たらどうするかなんて、私はもうずっと前から決めているの。だから今更選択肢の提示なんて結構よ」


千年伯爵は首を傾げたけれど、彼女は構わず言い放った。
今度は裁きを下す、断罪者のような口調で。


「私が、“私”の世界の女王クイーンよ」


遠目にもの首を絞めるロードの力が緩んだのがわかった。
褐色の指先は今や添えられる程度だ。
間近で目を見開いたロードに構わずには続けた。


「服従も逃走もごめんだわ。“私”という領土は誰にも侵略させない。頭のてっぺんからつま先まで、全てが私の意思に拠るものよ」


は強く頭を振って、千年伯爵とロードの手を同時に打ち払った。


「理不尽な言い分に負けないはしない。不公平な判決には屈しはしない。何度否定されようと、私は“私”の言葉と行動を忘れない」


見慣れぬ花だと刈り取られると分かっていても、土を耕して、種をまいて、成長することを止めはしない。


「教団が法廷で、私がアリスだと言うのなら、それでも構わない。私はそこで、このちっぽけな心を治められるだけの、賢明な王になってみせましょう」


黄金。
その色がやけに目につくことに気がついて、の言葉に呆然としていたアレンは息を呑んだ。
圧倒されるようなその光は、よく見知った少女と、対峙する道化の双眸に宿っている。
どういうことだ?
偶然とは思えない類似点に胸がぎゅうと締め付けられる。
はただ、鮮やかに光る瞳で、微笑んでみせた。


「知っているでしょう?マッドハッター」


千年伯爵を真っ直ぐに見据えて。


「“アリス”とは最後に女王クイーンとなるものよ」


放たれた声に突き飛ばされるように、千年伯爵が後ろによろめいた。
そのまま両手で顔を覆って震え始める。
アレンは最初、彼が泣いているのかと思った。
気違いな笑い声が聞こえてきても、何故だかまだそう思えた。


「……だからこそお前は脅威だと言うのニ」


は冷静な顔でそれを見ている。


「この戦争は、我らの王と奴ら王を懸けた殺し合い。白の女王も赤の女王もすでに存在しているのデス」


千年伯爵は哄笑をおさめると、うって変わって静かな様子でに背を向けた。
ゆっくりと椅子に腰掛ける。


「そこに介入しうる第三者……ルールから逸脱した“女王クイーンアリス”の出現を、誰もが防ごうとしていル」
「………………………」
「アリスの目覚めは世界の破壊と同義」
「…………………………」
「彼女が罪を犯す前に裁き、ただの手駒カードへと変えてしまいたいと思っているのですよ。……教団も、我輩もネ」
「結局は同じなのね」


は淡々とその事実を口にした。


「教団側も、あなた達も、“私”の消滅を望んでいる」


やめてくれ、とアレンは咄嗟に口にしそうになった。
いつも、いつだって、が自分自身をそう思っていることは知っている。
ただそれを言葉にしないでくれ。声に出さないでくれ。
確固たる形にしないでくれ。
僕は、そんなこと望んでないって、伝えたじゃないか。
どれだけ世界がそれを要求していても、僕だけは違うのだと告げたじゃないか。


こんなのは、傷つく。


「残念ながらそのご希望には応えられない。私は“その時”が来るまで“”として生きてゆく」
「“その時”が来たラ?」
「…………………………」
「契約に従順なのは良いことデス。けれどその相手が教団でなければならない理由はないでショウ?」
「それは」
「“生かしておく”だけなら、我輩たちにも可能。イイエ、我輩たちのほうが余計な制約をしない分だけ利があるとは思いませんカ?」


痛い。
心臓が内側から炎に焼かれて爛れてゆくみたいだ。
アレンは動悸を抑えようと息を吸い込んだ。
は少し呆れた風に呟く。


「……勧誘はまだ続いていたわけね」
「エエ。今日は本当に、そのためだけに来たんデス」
「だったらもうお終いにして。これ以上は時間の無駄よ」
「何故?」
「私はすでに答えを出した」
「そう、彼らのためにネ」


千年伯爵の手がこちらへと振られる。
そのとき垣間見えた瞳がいつものように空洞だったから、アレンは我が目を疑った。
先刻は確かに黄金色に染まっていたはず。
気のせいだったのだろうか?
否、


「正体を知った途端、小鹿はアリスを突き放す。同じように、奴らもきっと、“”を突き放しますヨ」
「決め付けてくれるのね」
「我輩にはわかりません。どうしてお前は奴らに固執すル?」
「そんなの」
「お前が“仲間”と呼ぶ奴らこそが、名前を消させ、存在を失わせ、自由を奪い取った犯人だというのニ」
「違う」
「違いませン。……そう」


千年伯爵はゆっくりと首を巡らせて、扉の前のエクソシストの三人に微笑みかけた。


「お前たちが、“”を、理不尽の世界に閉じ込めているのですヨ」
「違う!」


の否定は確かなのに、何故だか空虚に響いて消えた。


「教団は法廷。ならば先に言ってあげたほうが彼女のためデス。犯される前の罪を告発するように、“お前なんて……”」


優しい声に暴かれるようにアレンは自分自身の叫びを聞く。


なんて……』


「“仲間じゃない”、“信用できない”、“嘘つきの罪人め”!―――――――――“大嫌い”だとネ」


『大っっっ嫌いなんですよ!!』


アレンはを見た。
そして彼女の瞳の光が揺らいだのに気づいてしまった。
咄嗟に伏せられた睫毛が震えて、アレンの視線から逃れようとしている。
何かが、ゆっくりと、心に突き刺さって固まった。
無感覚の痛み。
世界から色彩が消える。輪郭が歪み出す。線がぶれて、生命いのちが物体に成り下がる。
唯一鮮明なのは陽炎のように儚い黄金。


死の宣告を受けたのはアリスのはずなのに、何故だかアレンは他人事だとは思えなかった。
それでも理不尽だと非難することはできない。
黙って刑を受け入れるしかない。
何故なら無自覚のアリスと違って、アレンはしっかりと己の罪を認めているのだから。


断罪はとても静かに。
は、俯いたまま、決してアレンを見ない。












いやぁ、面倒くさい!の一言に尽きる話ですね。ややこしくてすみません……。(汗)
今回は教団側→ヒロインの不信感をアリスに例えております。
ヒロインは現在(対外的には)別人として生きているので、過去に犯した罪が科せられることはない。
その無実こそが“罪”であるということですね。(償いをしていないわけですから)
それを根本から破壊してやろうというのが伯爵の誘い文句です。
さて、アレンサイドはどう出るのか。次回に続きます。
ちなみにアリスの解釈は超個人的なものですのでご了承くださいませ。

次回はアレンのターンです。
ここ数話ほとんど何もしてませんからね!(汗)活躍していただきたいと思います。よろしくお願いします!